10月25日閉館のシネスイッチ銀座で『遥かな町へ』舞台挨拶
ベストカレンダー編集部
2026年10月24日 20:48
シネスイッチ銀座閉館 | 開催日:10月25日
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閉館を控えたシネスイッチ銀座で『遥かな町へ』を語る
映画『遥かな町へ』の大ヒット御礼舞台挨拶が、閉館を控えたシネスイッチ銀座で行われた。登壇したのは、脚本・監督を務めた錦織良成監督、同作の音楽を担当した作曲家の瀬川英史さん、映画評論家の北川れい子さん。上映後の会場には大勢の観客が集まり、トークの最後には映画館への感謝を込めた錦織監督の言葉に大きな拍手がわき起こった。
シネスイッチ銀座は71年の歴史に幕を閉じる。錦織監督は「あと2日で71年の幕を閉じようとするシネスイッチ銀座でトークショーを行うことができて本当にうれしく思っています」とあいさつ。聞き手を務めた北川さんは、書店や映画館が減っていることに触れ、どちらも文化が集まる場所だと説明した。映画の記憶は、作品だけでなく、どの映画館で観たかという体験とも結びつく。最後のプログラムとなる『遥かな町へ』とともに、この劇場のことも思い出してほしいと観客に呼びかけた。
『ニュー・シネマ・パラダイス』とのつながり
北川さんは、シネスイッチ銀座を代表する作品として『ニュー・シネマ・パラダイス』を挙げた。同作は1989年に同館で初公開され、40週間のロングランを記録。1館のみで27万人を動員し、ミニシアターブームを代表する作品となった。『遥かな町へ』のエンドロール曲は、同作をイメージしているという。
錦織監督は、タイムスリップを描く作品ではないものの、家族を振り返る物語という点に共通性を感じたと話した。一方、瀬川さんは、エンニオ・モリコーネが作曲した名作の名前を出されることには大きなプレッシャーがあると冗談交じりに語り、会場を笑わせた。錦織監督は、瀬川さんを物語の舞台である鳥取県倉吉市に招いた理由も説明。昭和の街並みが残る倉吉の空気を実際に感じてもらい、地域と一体となった撮影の環境を音楽づくりに生かしてほしかったという。
倉吉の街並みと実物にこだわった撮影
倉吉を訪れた瀬川さんは、現地で「そこからスイッチが入った」と振り返った。完成した音楽を聴いた錦織監督も、現場に来てもらってよかったと話している。瀬川さんは、映像で見たままの街並みが実際にあり、家族関係なども現場の芝居を見ることで理解できたと、訪問による刺激を語った。
錦織監督は、可能な限りCGに頼らず、倉吉の景観を生かしてアナログで撮影したかったと説明した。撮影時には、道路のアスファルトをはがして砂利道に整えた場所もある。実物のSL(蒸気機関車)や当時のバスを走らせ、エキストラのためには昭和の衣装を1000着以上用意し、全員に当時のメークを施した。監督は、当時の服装の華やかさや、仕立てられたスーツのかっちりした印象にも触れている。
細部に実物らしさを宿す姿勢について、錦織監督は黒澤明監督のエピソードを紹介した。画面に映らないタンスの引き出しにも本物の着物を入れ、物理的な重みを持たせたという話を引き合いに、役者が演じるうえでは、画面に映らない部分も含めてその場に存在することが大切だと語った。『遥かな町へ』でも、街並みや衣装、小道具などを通して作品世界を支える工夫が重ねられている。
スクリーンで見つけたい映像と音の仕掛け
錦織監督は、作品を映画館のスクリーンと音響で観る意義を強調した。作り手はスクリーンで映えるよう、細かな部分まで演出しているため、音の細部などはパソコンやテレビでは聞こえにくい場合があるという。瀬川さんも、できれば作品を2回観てほしいと話した。SLが実際に走る場面は劇中で1回だが、SLの音は前半の大切な場面でも2〜3カ所使われている。2回目には、映像にSLが登場する前から音が鳴っていることに気づけるという。
錦織監督は、時代を表す要素は目に見えるものだけではなく、音も重要だと説明。自身が『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』を撮るほど電車好きであることも明かし、同作の冒頭に登場する主人公の家は東京・成城あたりをイメージし、背後を通る電車は小田急線だと紹介した。細部へのこだわりを知ったうえで観ることで、画面に映る街や衣装だけでなく、音の置き方にも目を向けられる内容となっている。
家族の物語に込めた昭和へのまなざし
『遥かな町へ』は、48歳の建築デザイナー、中原博史が故郷の鳥取・倉吉を訪れたことをきっかけに、1963年の町へ迷い込む物語だ。母の墓前を訪れた博史は、意識は48歳のまま、14歳の自分の身体に戻る。そこで若き日の母や妹、祖母と再び向き合い、やがて突然家を出て失踪する父の姿にも出会う。原作は谷口ジローさんの漫画で、作品は日本映画、カラー、シネマスコープ、126分、PG-12として紹介されている。
イベントの終盤、北川さんは、作品を観るたびに新しい発見があると語った。初めはストーリーを追い、次に小物や衣装、部屋のセットなどへ目が向くことで、映画の奥深さが広がるという。瀬川さんも複数回の鑑賞を呼びかけ、自身が20代の頃からシネスイッチ銀座に通い、さまざまな映画を観てきた思い出とともに、同館への感謝を述べた。
錦織監督にとっても、シネスイッチ銀座は青春の思い出の場所だった。良質な洋画作品が上映されることは楽しみであり、希望でもあったと振り返る。世界各国の作品に触れられる映画館の役割について語り、映画が人の人生を少しだけ変えるかもしれないという思いを示した。また、『遥かな町へ』は倉吉や鳥取県にとって大きな財産だとし、日本の多くの人に届くこと、字幕版を通じて世界にも広がることを願った。
クライマックスで描かれる父親の選択に戸惑う声があったことにも触れ、錦織監督は、父親が背負うことになる昭和という時代の暗い影に言及した。それは谷口ジローさんからの大きなメッセージではないかと述べ、作品を2回、3回と観て、その時代のメッセージを受け止めてほしいと語った。最後にシネスイッチ銀座へ「ありがとう」と伝えると、観客席から大きな拍手が送られた。
作品情報
映画『遥かな町へ』は全国各地で上映中で、上映劇場は公式サイトで案内されている。作品のクレジットには、大谷亮平さん、及川桃利さん、磯谷萌々子さん、戸田菜穂さん、滝藤賢一さんが出演者として記載されている。脚本・監督は錦織良成さん、原作は谷口ジローさん、音楽は瀬川英史さん。
エグゼクティブプロデューサーは山本敬さん、企画プロデュースは結城豊弘さん(ANOSA)、プロデューサーは安川唯史さん。制作はgoen、製作はBARCOS、配給・宣伝はムービー・アクト・プロジェクト、配給協力は渋谷プロダクションが担当する。作品の公式サイトは https://harukanamachie.jp/。X/Instagramは @harukanamachie。著作権表記は©2026 映画「遥かな町へ」BARCOS。
舞台挨拶では、倉吉の風景や撮影の工夫、音楽に込めた仕掛け、家族の物語が描く昭和の時代背景が語られた。シネスイッチ銀座の閉館を前に、映画館で作品を観る体験と、劇場に刻まれた観客それぞれの記憶にも光が当たる機会となった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品 | 映画『遥かな町へ』 |
| 舞台挨拶登壇者 | 錦織良成監督、瀬川英史さん、北川れい子さん |
| 舞台 | 鳥取県倉吉市。昭和の街並みを生かして撮影 |
| 上映状況 | 全国各地で上映中。劇場は公式サイトに掲載 |
| 上映時間・区分 | 126分、PG-12 |
| 公式サイト | https://harukanamachie.jp/ |
| SNS | X/Instagram:@harukanamachie |
| シネスイッチ銀座 | 71年の歴史に2026年10月25日で幕を閉じる |
映画の物語だけでなく、街並みや衣装、音に込められた仕掛けを知ることで、鑑賞の視点が広がる。閉館を控えたシネスイッチ銀座で語られた作品への思いは、映画館で観ることの意味も改めて伝えていた。
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