歯みがき後に唾液の抗インフルエンザIgAが増加、ライオンが研究発表
ベストカレンダー編集部
2026年10月29日 07:43
唾液ケア学術集会 | 開催日:11月29日
カレンダーに追加:Google|iPhone/Outlook
歯みがき後、唾液中の抗インフルエンザIgAが増加
ライオン株式会社は、歯みがき行動の後に、インフルエンザウイルスに反応する唾液中の免疫成分「IgA抗体」の濃度が増加することを明らかにしました。歯みがきによって口腔内を清潔に保つことが、唾液に本来備わる防御機能を発揮しやすくする可能性を示す研究成果です。
測定では、歯みがき行動前と比べ、歯みがきから5分後の唾液に含まれるインフルエンザウイルス反応性IgA抗体濃度が有意に増加しました。今回の研究は、歯みがきが唾液の免疫成分に及ぼす影響に焦点を当てたものです。成果は2026年11月29日開催の「第5回日本唾液ケア科学会学術集会」で発表予定です。
口腔はウイルスが体内に入る経路の一つであり、唾液は侵入したウイルスに対する最初の防御機構として働きます。抗体のほか、ラクトフェリン、ムチン、リゾチームなども唾液による感染防御に関わる成分です。研究では、その中でも中心的な免疫因子とされるIgA抗体を調べました。
流行時期の変化を背景に、唾液の働きを分析
ライオンによると、2026年は前年より5週早い8月にインフルエンザの流行が始まり、感染対策を始めるタイミングにも変化が見られました。同社は、日常的な口腔ケアと唾液の防御機能の関係を科学的に調べる研究を進めています。
同社は2025年の先行研究で、歯みがき行動によって唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを、同社調べで世界で初めて確認したと発表しました。一方、歯みがきが唾液中の免疫成分にどのような変化をもたらすかは明らかになっていませんでした。そこで今回は、唾液中のIgA抗体に着目し、歯みがき行動の前後で濃度を解析しました。
研究対象は、う蝕・歯周病のない20~50代の健康な男女14名です。解析には、歯みがき行動の前後に採取した唾液を使い、インフルエンザウイルスに反応するIgA抗体濃度をELISA法で測定しました。採取条件は、先行研究で実施したものに基づいています。
- 唾液採取前日の23時以降は、食事と口腔清掃をせずに過ごす。
- 翌朝午前9時に、5分間歯をみがく。
- 市販のハミガキとハブラシを使用し、すべての歯の頬側、舌側、咬合面をまんべんなく、普段と同様の方法でブラッシングする。
- 歯みがき後、10mlの水で口をゆすぐ。
この条件で得られた唾液を用い、歯みがき前と歯みがき行動5分後の変化を比較しました。結果として、歯みがき後の唾液では、インフルエンザウイルスに反応するIgA抗体濃度が有意に増加していました。
口腔内細菌とIgA抗体の関係から考察
IgA抗体はインフルエンザウイルスだけでなく、口腔内細菌にも反応すると報告されています。研究チームは、歯みがき前のように口腔内細菌が多い環境では、唾液中の多くのIgA抗体が口腔内細菌に反応している可能性があると考察しています。
歯みがきによって口腔内細菌を取り除くことで、唾液中のIgA抗体が口腔内細菌ではなく、外部から侵入したインフルエンザウイルスに反応しやすくなった可能性があるとしています。今回の研究では、歯みがき後にウイルス反応性IgA抗体の濃度が増えたことを確認しました。これは口腔内を清潔に保つことと、唾液の免疫機能との関係を考える上での知見です。
同社は、この結果を先行研究で確認した唾液による細胞への感染防御とあわせて考察しています。歯みがき後には口腔内細菌が少なくなり、インフルエンザウイルスを不活化できるIgA抗体濃度が増えることで、細胞への感染が防御されたと考えられると説明しています。ただし、今回の発表が示すのは研究で得られた結果とその考察であり、歯みがきだけで感染を防げると結論づけるものではありません。
神奈川歯科大学短期大学部副学長の槻木恵一氏は、IgA抗体は唾液中に豊富に含まれる重要な免疫成分で、ウイルスに結合して不活化させる一方、口腔内細菌が多いと免疫力を十分に発揮できなくなるとコメントしています。歯みがきで口腔内を清潔にし、細菌を減らすことが唾液の免疫力向上に重要との見解を示しました。
槻木氏は、2025年に確認された唾液のインフルエンザウイルス不活化能の向上に続き、今回、その機能を担う可能性があるIgA抗体濃度の増加が明らかになったことを、メカニズム解明につながる進展と位置づけています。人混みなど感染リスクが高い環境に備える口腔ケアの一つとして歯みがきが有用である可能性にも触れ、手洗い・うがいと同じように、感染症予防の一環として歯みがきを行う習慣が広がることへの期待を述べています。
学術集会で研究成果を発表
本研究の成果は、第5回日本唾液ケア科学会学術集会で発表されます。会期は2026年11月29日、会場は東京工科大学蒲田キャンパスです。演題は「歯みがきによる唾液中の抗インフルエンザウイルスIgAの増加」で、ライオン株式会社の久保裕亮氏、小原幹太氏、岩本拓氏、物井則幸氏、牧利一氏と、神奈川歯科大学の槻木恵一氏が発表者として記載されています。
ライオンは、日常の口腔ケアによって唾液の質を向上させ、唾液本来の防御機能を発揮しやすくすることが、全身の健康維持に寄与する可能性が示唆されたとしています。今後も唾液に焦点を当て、口腔と全身の健康維持に資する科学的エビデンスの取得を目指す方針です。また、インフルエンザなどの感染症への備えとして、従来から提唱されている手洗い・うがいに加え、口腔衛生の重要性を研究成果に基づいて伝え、新たな習慣の創出につなげるとしています。
研究に関する槻木氏のプロフィールは、1993年に神奈川歯科大学歯学部を卒業、1997年に同大学大学院歯学研究科を修了。2007年から神奈川歯科大学教授を務め、2014年から同大学副学長(2025年3月まで)を務めました。歯科医師、歯学博士で、専門分野は口腔病理診断学・唾液腺健康医学・環境病理学。NPO法人日本唾液ケア科学会理事長です。
関連情報として、ライオンの統合レポート「オーラルヘルスケアの成長加速」「ライオンの研究開発・知財戦略」、および2025年10月28日付ニュースリリース「世界初、歯みがき行動で唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを確認」が挙げられています。先行研究の論文は、Kubo Y et al. “Enhanced anti-influenza virus activity of saliva following toothbrushing.” BDJ Open. 2025;11:68.です。IgA抗体と唾液中の抗ウイルス活性に関する参考文献として、Malamud D et al. “Antiviral activities in human saliva.” Adv Dent Res. 2011;23:34–7.が示されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究機関・発表者 | ライオン株式会社。発表者は久保裕亮、小原幹太、岩本拓、物井則幸、牧利一、槻木恵一 |
| 研究対象 | う蝕・歯周病のない20~50代の健康な男女14名 |
| 主な結果 | 歯みがき行動5分後、インフルエンザウイルスに反応する唾液中IgA抗体濃度が有意に増加 |
| 発表日・会場 | 2026年11月29日、第5回日本唾液ケア科学会学術集会、東京工科大学蒲田キャンパス |
| 演題 | 歯みがきによる唾液中の抗インフルエンザウイルスIgAの増加 |
今回の研究は、歯みがき後の唾液における抗インフルエンザIgA抗体濃度の変化を示し、口腔内環境と唾液の防御機能を結びつけて考える材料を提示しています。研究成果の発表は2026年11月29日に予定されています。
PRAmazonアソシエイトのリンクです