ベストカレンダー編集部
2026年6月24日
開窯430年記念 十四代 中里 太郎右衛門 展(京都髙島屋・2026年7月1日〜6日)
京都髙島屋6階 美術画廊で、2026年7月1日(水)から7月6日(月)までの6日間、「開窯430年記念 十四代 中里 太郎右衛門 展」が開催される。唐津焼を代表する名門・中里家の当代である十四代 中里太郎右衛門が、開窯430年という節目の年に新作を一堂に並べる注目の陶芸展だ。会場には茶盌や水指、花入、香炉といった茶陶を軸に、近年の代表シリーズと新たな試みが並ぶ。
京都の街がちょうど祇園祭の準備期間に入る7月上旬、茶の湯文化と深く関わる唐津焼の最前線を、四条通り河原町の百貨店フロアでまとめて鑑賞できる希少な機会である。陶芸ファンはもちろん、夏の茶席に向けて道具を見立てたい愛好家にとっても見逃せない6日間となる。
開窯430年が示す中里家と唐津焼の歩み
「開窯430年」という見出しの数字は、中里家の歩みそのものを指している。中里家の初代・又七は16世紀末に唐津で作陶を始めたと伝えられ、江戸時代には唐津藩の御用窯として「献上唐津」と呼ばれる将軍家や大名家への進物を担う立場にあった。藩窯としての格式を保ちながら、地域の生活雑器から茶陶まで幅広い焼物を生み出してきた家系である。
近代に入ると、十二代 中里太郎右衛門(号・無庵)が桃山時代の古唐津の再現に挑み、岸岳古窯群の調査と陶片研究から失われていた絵唐津・斑唐津の世界を呼び戻した。十二代は1976年に重要無形文化財「唐津焼」の保持者、いわゆる人間国宝に認定され、唐津焼そのものの評価を全国区へ押し上げた立役者でもある。続く十三代、そして今回の十四代へと、技と研究の蓄積はそのまま受け継がれてきた。
430年の歴史というと圧倒されがちだが、実際には「古唐津に学び、当代の感覚で焼く」という姿勢が一貫している。今展の新作も、その長い時間軸のうえに置かれて初めて意味が立ち上がる作品群と言ってよい。
十四代 中里太郎右衛門という作家像
十四代 中里太郎右衛門は1957年、唐津・中里家の長男として生まれた。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科に進み、同大学院でも彫刻を学んだ経歴を持つ。陶工としてではなく彫刻家として造形の基礎を積んだ点が、当代の作風を語るうえで欠かせない補助線となっている。父である十三代から「焼物に進む前に形の勉強を」と促されての進学だったと伝えられる。
大学院修了後は多治見市陶磁器意匠研究所などで研鑽を積み、1983年に唐津の中里太郎右衛門陶房で作陶生活に入った。日展や日本伝統工芸展への出品を重ね、佐賀県展県知事賞、日展特選などを受け、2002年に十四代 中里太郎右衛門を襲名している。襲名以降は唐津の伝統技法を引き継ぎつつ、自身の彫刻的感覚を加えた独自の造形を追求してきた。
京都髙島屋の案内では、中里家の代表技法である「叩き」と古唐津の世界に加え、「掻落し」による文様表現や、炭化焼締を用いた「墨雲」シリーズが今展の柱として挙げられている。古典に根を張りながら、当代ならではの語彙を増やしてきた歩みが、新作の並びから読み取れるはずだ。
叩き・掻落し・墨雲——会場で味わう三つの表情
中里家を象徴する「叩き」は、内側に当て木を添え、格子状の刻みを彫った板で外側を打って成形する古い技法である。土が締まることで歪みが出にくくなり、壺や大甕、力強い水指に独特の張りを与える。古唐津の甕や壺にも見られる手法で、十二代がその再現に生涯を費やした技でもある。十四代の手にかかると、この叩きが新作のなかでどのような骨格として立ち上がるかが見どころの一つになる。
「掻落し」は、化粧土をかけたうえから先端の鋭い道具で文様を彫り起こす技法で、地と文様の境がくっきりと出る。十四代は多彩な文様表現で掻落しを展開しており、唐津の土味と図像が重なる現代的な意匠を生み出している。茶盌や花入で、その筆致と肌のコントラストを近距離で確認できるのは画廊展示ならではの利点だ。
もう一つの柱が、炭化焼締めによる「墨雲」シリーズである。釉薬を頼らず、窯のなかで燻し込まれた土肌そのものに景色を見出すこの一群は、当代が打ち出した独自の語彙にあたる。茶陶としての落ち着きと、彫刻出身の作家らしい量感が両立した世界観で、香炉や水指といった用途のなかにも抽象的な造形性が宿る。
会期・会場・観覧のポイント
会場は京都髙島屋6階の美術画廊。会期は7月1日(水)から7月6日(月)までの6日間と短いため、京都観光の予定と組み合わせる場合は早めの時間帯が安心だ。デパートの開店時間に合わせて訪れれば、混雑前にゆっくりと作品と向き合える。デジタルカタログも京都髙島屋公式の特集ページから閲覧でき、来場前に出品傾向を予習しておくと、会場での比較鑑賞がさらに楽しくなる。
会期中は祇園祭の宵々山・宵山に向けて街全体が動き出す時期にあたる。茶陶を中心に据えた展観のため、夏の設えや風炉の季節を意識した道具選びの参考にも適している。なお、催事はやむを得ない事情で会期や内容が変更となる場合があるため、訪問前に公式情報の確認をおすすめする。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展覧会名 | 開窯430年記念 十四代 中里 太郎右衛門 展 |
| 会期 | 2026年7月1日(水)〜7月6日(月) |
| 会場 | 京都髙島屋S.C. 百貨店ゾーン 6階 美術画廊 |
| 出品作家 | 十四代 中里 太郎右衛門 |
| 主な出品 | 叩き、古唐津、掻落し、墨雲シリーズによる茶盌・水指・花入・香炉ほか新作 |
| カテゴリ | アート(美術画廊・陶芸) |
まとめ
唐津焼の名門・中里家が掲げる「開窯430年」は、単なる節目の数字ではなく、藩窯時代から現代までの研究と挑戦の蓄積を示すキーワードである。彫刻を出発点とする十四代が、叩きや古唐津の延長線上に「掻落し」と「墨雲」という当代の語彙を重ねたとき、唐津焼はどう更新されるのか——その答えを、京都髙島屋6階 美術画廊の6日間で確かめたい。茶陶を軸に、和の道具として暮らしに取り込みたい一点と出会える可能性も高い。短い会期だからこそ、早めの予定組みをおすすめする。
出典: 京都髙島屋 公式 TOPICS。中里家の歴史・技法・十四代の経歴については、中里無庵(十二代 中里太郎右衛門)に関する公開情報、唐津焼の叩き技法に関する解説、佐賀新聞「からつやきの軌跡」企画展報道等を参照。