ベストカレンダー編集部
2026年6月24日
パリと日本を往還した画家、坂部隆芳が描く「神の国」
2026年7月8日(水)から7月13日(月)まで、京都髙島屋6階美術画廊にて、画家・坂部隆芳氏の個展「神の国 大倭日高見国と秦氏」が開催されます。本展は、フランスを拠点に長年制作活動を続けてきた坂部氏が、日本の古代信仰と渡来氏族・秦氏という壮大なテーマに向き合った最新の展覧会です。会期はわずか6日間。京都という土地でこのテーマと出会うこと自体に、独特の意味があります。
坂部氏の作品世界は、しばしば「気高さと抒情性に溢れる」と評されてきました。今回の個展では、自然信仰、御霊信仰、そして古代から日本人が抱き続けてきた神への畏敬と尊重が、一枚一枚の画面に凝縮されています。京都髙島屋の公式トピックスでは「神に対する畏敬と尊重を体現した作品の数々を展観する」と紹介されており、単なる風景画でも宗教画でもない、坂部氏ならではの精神性が結晶した世界が広がる構成です。
1953年静岡生まれ — パリ国立美術学校で磨かれた画歴
坂部隆芳氏は1953年、静岡県に生まれました。1974年に日本大学芸術学部デザイン科を卒業した後、すぐに渡仏。フランスの名門・パリ国立美術学校(エコール・デ・ボザール)で研鑽を積み、1980年に同校を卒業しています。日本の美大からパリへと渡り、そのまま欧州に活動拠点を構えるという経歴は、戦後の日本人画家のなかでも独特の道筋です。
フランスでの評価も早くから定着していました。1982年にラ・セル・サンクス市賞 絵画部門最優秀賞とビジー城絵画部門最優秀賞、翌1983年にはポール・ルイ・ウェレー肖像画賞最優秀賞(パリ)、サロン・デ・アーティストで金賞と、立て続けに受賞を重ねています。作品はパリ近代美術館をはじめとする国内外のコレクションに収蔵され、欧州のコレクターからも高い評価を得てきました。現在はパリとイスタンブールを拠点に、ヨーロッパとアジアを横断する眼差しで制作を続けている画家です。
テーマは「大倭日高見国」と「秦氏」 — 古代日本の精神を掘り起こす
展覧会名にある「大倭日高見国(おおやまとひだかみのくに)」は、神道の祝詞「大祓詞」に登場する、日本の国土そのものをあらわす古語です。「日高見国」という呼称は『日本書紀』や『常陸国風土記』にも記載があり、平安期の『延喜式』にも「大倭日高見国」の表現が残されています。歴史学的には、東国(蝦夷の地)を指す用例と、ヤマト=日本そのものを指す用例の双方があり、研究者のあいだでも解釈が分かれる、神話と歴史の境界に位置する言葉です。
もうひとつのキーワード「秦氏(はたし)」は、5世紀から6世紀にかけて朝鮮半島経由で渡来したと伝えられる古代の有力氏族。京都・太秦(うずまさ)を本拠地に、養蚕・機織り・治水・酒造といった先進技術をもたらし、伏見稲荷大社や松尾大社の創建にも深く関わったとされます。京都という都市の骨格は、ある意味で秦氏が築いたとも言われるほどの存在です。京都髙島屋という土地で、この「秦氏」をテーマにした個展が開催されるという点に、本展ならではの文脈が重なります。
会期中のハイライト — 坂部氏による舞踏パフォーマンス
本展の特筆すべき見どころは、坂部隆芳氏本人による舞踏パフォーマンスです。京都髙島屋の発表によれば、開催は7月11日(土)午後3時から。絵画作品が並ぶ会場で、作家自身が身体表現を行うという稀有な機会となります。「神の国」というテーマを掲げる本展のなかで、絵画と舞踏という二つの表現が交差する場面は、土曜日の午後の限られた時間にしか立ち会えません。
京都という街は、平安遷都以前から渡来文化と土着信仰が幾重にも重なり合ってきた土地です。秦氏のもたらした技術と信仰、そして大倭日高見国という古代的呼称が指し示す「神の国」のイメージ。坂部氏のパリで培われた造形感覚が、この京都の地でどのような形を結ぶのか。会場で実際に作品と向き合うことで初めて見えてくるはずです。
まとめ — 開催情報
| 展覧会名 | 坂部 隆芳 個展 神の国 大倭日高見国と秦氏 |
|---|---|
| 会期 | 2026年7月8日(水) ~ 7月13日(月) |
| 会場 | 京都髙島屋 6階 美術画廊 |
| 作家 | 坂部 隆芳(さかべ たかよし) |
| 関連イベント | 坂部氏による舞踏パフォーマンス(2026年7月11日(土)午後3時から) |
| 主催 | 京都髙島屋 |
坂部隆芳氏のキャリアの到達点ともいえる「神の国」シリーズが、京都という古代史と渡来文化の交差点で公開される本展。パリで磨かれた抒情性と、日本古代への深い眼差しが交わる6日間です。日程の都合がつく方は、7月11日(土)の舞踏パフォーマンスにあわせた来館もおすすめできます。一部商品の入荷遅れや、催し・イベントが変更・中止となる場合がございますので、来館前に公式サイトでの最新情報の確認をおすすめします。
出典: 京都髙島屋 公式トピックス「坂部 隆芳 個展 神の国 大倭日高見国と秦氏」 / 経歴情報: ナカジマアート 坂部隆芳 略歴 / Wikipedia「日高見国」