固定残業代は何時間分?超えた分はいくらもらえる?
固定残業代を示すときのルールと、裁判所の見方
固定残業代は、一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対して定額で払う割増賃金です(厚生労働省)。示し方のルールと、有効かどうかの判断は別の話なので、分けて書きます。
(a) 求人票などでの示し方(厚生労働省)。募集要項や求人票に固定残業代を含めた賃金を示すときは、次の3点を示すよう求められています(若者雇用促進法に基づく指針)。
- 固定残業代を除いた基本給の額(基本給と区分して示す)
- 固定残業時間と金額(固定残業代の算定の基礎にした労働時間数と金額等の計算方法)
- 超過分の追加払い(固定残業時間を超える時間外・休日・深夜の労働には、割増賃金を追加で払う旨)
(b) 裁判所の見方。固定残業代として払ったものが労基法37条の割増賃金の支払いになるかは、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分を判別できるか、その手当が時間外労働等の対価として払われているかの2点を見て判断されます(契約書の記載のほか、賃金体系全体での手当の位置づけなどを考慮)。最高裁の判決に、テックジャパン事件(最一小判 平成24年3月8日)、医療法人社団康心会事件(最二小判 平成29年7月7日)、国際自動車事件(最一小判 令和2年3月30日)があります。
この計算の「追加で払われるべき額」は、労基法37条の考え方です。実際の残業で本来払われる割増賃金(時間外25%・月60時間超50%・深夜+25%・法定休日35%)から固定残業代を引いた額を出します。月60時間を超える時間外労働の割増率は中小企業も2023年4月1日から50%です(厚生労働省)。
時間単価は、割増賃金の算定基礎を1か月平均所定労働時間(年間休日から出すときは(365−年間休日)×8時間÷12)で割った額です。家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、割増賃金の算定基礎に入れません(労働基準法施行規則第21条)。
最低賃金との比較は別の決まりです。最低賃金法第4条第3項・同法施行規則第1条により、精皆勤手当・通勤手当・家族手当と、時間外・休日・深夜の割増賃金などを除いた賃金で比べます。この面の最低賃金の判定は、入力した基本給(割増賃金の算定基礎)で比べる目安です。住宅手当などは割増の算定基礎には入りませんが、最低賃金の比較には入ります。手当を含めた額での確認は最低賃金の計算へ。
月45時間の上限
36協定で定められる時間外労働は、原則として月45時間・年360時間までです(厚生労働省)。固定残業代が45時間分を超えるときは、その契約の内容を確かめてください。残業代そのものの計算(時給・月給から全時間を出す)は残業代の計算、最低賃金は最低賃金の計算、手取りは年収の手取りの計算へ。
固定残業代のよくある質問
固定残業代が何時間分かは、どう計算する?
固定残業代(月額)を、1時間あたりの残業代で割ります。1時間あたりの残業代は、時間単価(割増賃金の算定基礎÷1か月平均所定労働時間)に時間外の割増率1.25をかけた額(円未満四捨五入)です。たとえば算定基礎が20万円・月の所定労働時間が160時間なら、時間単価は1,250円、1時間あたりの残業代は1,563円で、固定残業代4万円は約25.5時間分です。
実際の残業が固定の時間を超えたら、超えた分はもらえる?
もらえます。労働基準法第37条は、実際の割増賃金が固定残業代を超えれば、その差額を払うことを求めています(e-Gov 労働基準法第37条)。このページは、実際の残業で本来払われる割増賃金から固定残業代を引いた額を、追加で払われるべき額として出します。
月60時間を超えた残業は、割増率が変わる?
変わります。月60時間を超える時間外労働の割増率は50%で、中小企業も2023年4月1日から同じです(厚生労働省)。たとえば時間単価1,313円なら、60時間までは1時間1,641円、60時間を超えた分は時間単価×1.5で計算します。このページは月60時間の線を自動で反映します(法定休日の労働は60時間に数えません)。
固定残業代が45時間分を超えていたら違法?
それだけで違法と決まるわけではありません。ただ、36協定で定められる時間外労働は原則月45時間・年360時間までで、特別条項を結んでも年720時間・月100時間未満(休日労働を含む)などの上限があります(厚生労働省)。固定の時間が45時間を超えるときは、その時間の残業を前提にした契約になっていないか、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに確かめてください。
固定残業代を引いた基本給が最低賃金を下回っていたら?
最低賃金を満たすかは、精皆勤手当・通勤手当・家族手当と時間外・休日・深夜の割増賃金などを除いた賃金を1か月平均所定労働時間で割った時間額で比べます(最低賃金法第4条第3項・同法施行規則第1条)。住宅手当などは比べる賃金に入ります。固定残業代を足して最低賃金を満たしているように見えても、固定残業代を除いた額で下回っていれば、最低賃金を下回る計算です。このページは、算定基礎を月平均所定労働時間で割った額を、都道府県の最低賃金と比べます。
2026年10月6日現在の情報です(データ最終更新: 2026年10月4日)。出典: 厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」 / 裁判所「最高裁判所判例集」令和2年3月30日第一小法廷判決(平成30年(受)第908号・国際自動車事件。テックジャパン事件・康心会事件を引く) / 厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(中小企業は2023年4月1日から) / 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」 / e-Gov 法令検索 労働基準法施行規則 第21条(割増賃金の基礎から除く賃金) / e-Gov 法令検索 労働基準法 第37条(時間外・休日・深夜の割増賃金) / 厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」 / 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(令和8年度地域別最低賃金全国一覧・平成14年度から令和8年度までの改定状況)