JR東日本が3月から中央本線で超電導技術を用いた電力供給試験を開始

超電導き電実証試験

開催日:3月1日

超電導き電実証試験
超電導き電システムって何がすごいの?
超電導き電システムは電気抵抗がゼロになる特性を持ち、電力損失を抑えて安定した電力供給が可能です。
実証試験はいつから始まるの?
実証試験は2025年3月から開始され、中央本線の日野駅から八王子方面で行われます。

超電導送電による営業列車への電力供給の実証試験

2025年2月25日、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)と共に、中央本線の日野駅と豊田駅間において、超電導き電システムを用いた営業列車への電力供給の実証試験を開始することを発表しました。この試験は、これまでの研究開発の成果を基に、実際の営業線での運用を目指すものです。

中央本線において超電導送電で営業列車に電力を供給します-超電導き電の実証試験- 画像 2

営業線における実証試験の概要

鉄道総研では、2007年から超電導き電システムの開発に取り組んでおり、これまでにいくつかの段階的な試験を行ってきました。具体的には、以下のような試験が行われています。

  • 2017年度:夜間帯に車庫回線へ接続し、補機電力への送電試験を実施
  • 2019年度:営業回線へ接続し、夜間帯における試験列車への駆動電力の送電試験を実施

これらの試験を通じて、電圧降下の抑制などの機能が確認され、営業線での運用に適したシステムへの改良が進められてきました。2025年3月からは、中央本線の下り線に超電導き電システムを接続し、日野駅から八王子方面へ向かう営業列車に電力を供給する実証試験が行われます。

中央本線において超電導送電で営業列車に電力を供給します-超電導き電の実証試験- 画像 3

超電導き電システムの技術的背景

超電導き電システムは、直流電気鉄道において必要な電力を3000V以下の低い電圧で送ることができるため、構造物と電力設備の離隔を小さく設計できます。このシステムは、都市圏内の地下鉄や通勤路線での採用が進んでいますが、大きな電流が必要なため、電圧降下が大きくなるという課題があります。そのため、電圧を安定させるためには、変電所の設置間隔を狭くする必要がありました。

超電導き電システムは、超電導材料を用いた超電導ケーブルと冷却装置から構成されており、一定の温度以下で電気抵抗がゼロとなる特性を持っています。この技術により、変電所からの電力損失を抑え、車両へ安定した電力供給が可能となります。また、電圧降下を抑えることで、将来的には変電所の集約化や回生エネルギーの有効活用が期待されます。

実証試験の目的と期待される成果

今回の実証試験では、営業列車に必要な電力を供給するためのケーブルや冷却システムの性能向上が図られています。具体的には、以下のような機能の実証を目指します。

  1. 営業ダイヤに応じた複数の営業列車への電力供給
  2. ブレーキ回生によって生じた電力を他の列車へ供給するシステムの実証

これらの機能を通じて、超電導き電システムの課題を抽出し、今後の運用に向けた改善点を明確にすることが期待されています。また、鉄道総研はこの研究を国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しており、さらなる技術の進展が見込まれています。

超電導き電システムの研究開発支援

超電導き電システムの研究開発は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)や国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託・助成事業を受けて行われています。これにより、最新の技術を取り入れた研究が進められ、鉄道の効率化や環境負荷の低減に寄与することが期待されています。

まとめ

超電導送電を用いた営業列車への電力供給の実証試験は、鉄道の未来を切り開く重要なステップです。これまでの研究結果を踏まえたこの試験により、鉄道の運行効率やエネルギーの有効活用が進むことが期待されています。以下に、この記事で紹介した内容をまとめます。

項目 内容
試験開始日 2025年3月
試験区間 中央本線日野駅・豊田駅間
主な機能 複数の営業列車への電力供給、ブレーキ回生電力の供給
研究支援機関 国土交通省、JST、NEDO

このように、超電導き電システムの実証試験は、鉄道の新たな可能性を示す重要な取り組みであり、今後の発展が期待されます。

参考リンク: