國分功一郎の『中動態の世界』が3月28日に新潮文庫から発売、責任論を新収録

中動態の世界発売

開催日:3月28日

中動態の世界発売
『中動態の世界 意志と責任の考古学』ってどんな本?
この本は、能動と受動を超えた中動態という概念を通じて、人間の自由を追求する哲学書です。
新潮文庫版にはどんな新しい内容があるの?
文庫版には新たに「責任論」が書き下ろしで収録され、責任の概念を深く考察しています。

新潮文庫から刊行される『中動態の世界 意志と責任の考古学』

2025年3月28日、株式会社新潮社より、國分功一郎氏の著書『中動態の世界 意志と責任の考古学』が新潮文庫として刊行されます。この書籍は、第8回紀伊國屋じんぶん大賞および第16回小林秀雄賞を受賞した話題作であり、特に注目されているのは文庫書き下ろしの「責任論」が収録されている点です。

本書は、能動でも受動でもない“中動態”という概念を軸に、言葉に規定される人間の不自由さを見つめ、本当の自由を求める内容となっています。単行本の刊行時から大きな話題を呼び、同じく新潮文庫から刊行された『暇と退屈の倫理学』は累計40万部を突破するなど、哲学書として異例の売行きを記録しています。

濱口竜介氏「この本は世界の見え方を一新させる」――國分功一郎著『中動態の世界 意志と責任の考古学』(新潮文庫刊)3月28日に発売! 画像 2

『中動態の世界』の概要

本書は2017年に「シリーズ ケアをひらく」として医学書院から刊行された哲学書であり、刊行当初から多くの読者の関心を集めました。著者の國分功一郎氏は、依存症当事者との対話を通じて、私たちの思考が能動と受動の対立に強く縛られていることに気づきました。歴史から姿を消した“中動態”という概念を手がかりに、私たちの思考の可能性を広げる試みがなされています。

中動態は、単に「する」と「される」の二元論を超えた新たな視点を提供します。著者はこの概念を通じて、人間の不自由さを見つめ、本当の自由を求める新たな哲学を提示しています。

濱口竜介氏「この本は世界の見え方を一新させる」――國分功一郎著『中動態の世界 意志と責任の考古学』(新潮文庫刊)3月28日に発売! 画像 3

各界からの絶賛の声

本書の刊行に際して、多くの著名人から絶賛の声が寄せられています。以下に一部のコメントを紹介します。

  • 濱口竜介氏(映画監督): 「中動態」を知って以降、撮影現場での捉え方が変わった。他者を、自己を、道具のように使用することに抵抗するために、この本は世界の見え方を一新させる。
  • 伊藤亜紗氏(美学者・作家): 國分功一郎『中動態の世界』は、言語学の領域を超えて、新しい見方を教えてくれる哲学の本である。
  • 斎藤哲也氏: 中動態の謎を解く旅を堪能した。「自由を追求することは自由意志を認めることではない」という一節は、自由論にとっても大変な示唆を含んでいる。
  • 山本貴光氏: 「する」でも「される」でもない行為のあり方を示唆する中動態。言語観ばかりか世界の見え方も変わるに違いない。
  • 橋本亮二氏: 『暇と退屈の倫理学』から5年半後に刊行された本書は、意志、責任、秩序について考察しており、現代社会の歪みを指摘している。

著者・國分功一郎氏のコメント

著者の國分氏は、書籍の刊行に際して「難しいと思ったら飛ばす! あとで、あるいは、いつか読めばいいのです。大切なのは自分なりの『中動態』のイメージをつかむこと」と述べています。彼は、日常生活の中に必ず「中動態」を通じてより良く理解できるものがあると信じています。

中動態とは何か

中動態は、学校教育において教わる能動と受動の対立を超えた概念です。例えば「誰かを好きになる」という行為は、能動でも受動でもない、第三の態として理解されるべきです。このように、日常的な事象を説明するためには、中動態の視点が不可欠です。

この中動態という文法は、2024年にノーベル賞を受賞したハン・ガン氏の著作でも言及されており、現代社会を生きる上での重要なテーマとなっています。

文庫版補遺「責任論」について

今回の文庫化に際し、著者は新たに補遺「なぜ免責が引責を可能にするのか──責任と帰責性」を収録しました。この部分では、著者が単行本では大きく踏み込むことがなかった「責任」という概念について考察しています。責任とは何か、そして「責任を負う」とはどういうことなのかを深く掘り下げています。

著者は、意志と責任が結びつくことで生まれる現代社会の歪みを指摘しており、時代を画する責任論としての重要性を持っています。

『暇と退屈の倫理学』の成功

國分氏の著作『暇と退屈の倫理学』は、2022年1月の刊行以降、累計40万部を超える売上を記録しました。この書籍は、20代から40代の読者を中心に広く支持され、普段は哲学書を手に取らない層にも受け入れられました。

現代の消費社会において、気晴らしと退屈が抱える問題を紐解いた本書は、哲学書として異例の売行きを見せ、2022年と2023年に「東大・京大で一番読まれた本」として話題となりました。

書籍の基本情報

以下に『中動態の世界 意志と責任の考古学』の基本情報をまとめました。

タイトル 中動態の世界 意志と責任の考古学
著者名 國分功一郎
発売日 3月28日(金)
造本 文庫
定価 990円(税込)
ISBN 978-4-10-103542-0
URL https://www.shinchosha.co.jp/book/103542/

以上のように、新潮文庫から刊行される『中動態の世界 意志と責任の考古学』は、現代社会における重要なテーマを扱った哲学書であり、特に中動態という失われた概念を通じて人間の自由について深く考察しています。読者にとって新たな視点を提供する一冊となるでしょう。

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