宍道湖中海の生態系を守る日 (記念日 12月13日)

宍道湖中海の生態系を守る日

40年にわたった国家事業を止めたのは、漁師たちの声でした。1963年(昭和38年)、農林省は島根県の宍道湖・中海を干拓し淡水化する大規模な土地改良事業に着手しました。当時、日本で3番目の規模となるこの事業には最終的に約851億円もの国費が投じられましたが、2002年(平成14年)12月13日、農林水産大臣が正式な中止を表明。反対運動が実を結んだ歴史的な日となりました。

宍道湖と中海は、淡水と海水が混じり合う「汽水域」という特殊な環境を持ちます。この絶妙な塩分濃度がヤマトシジミをはじめとする豊かな水産資源を育んでいます。宍道湖のシジミ漁獲量は長年にわたり全国トップクラスを誇り、地域の漁業を支える根幹でした。しかし、湖が淡水化されればシジミは繁殖できなくなり、やがて絶滅します。多くの魚種も失われ、水質は植物プランクトンが異常繁殖しやすい状態に変わるとされていました。

反対運動は長く、粘り強いものでした。漁船パレードや集会、シジミの無料配布といった活動を通じて市民が声を上げ続け、事業着手から約40年をかけてようやく中止にこぎつけました。淡水化中止から20年が経過した現在も、当時を知る漁業者たちは「反対運動は間違っていなかった」と振り返ります。

この記念日を制定したのは、島根県松江市に拠点を置く有限会社日本シジミ研究所です。代表の中村幹雄氏は島根県水産試験場を早期退職し、2002年5月8日に一人でこの研究所を設立しました。日本で唯一、シジミの調査・研究に特化した機関として、宍道湖の資源量推定や水産振興に取り組んできました。12月13日という日付は、中止表明がなされたあの日を刻み込む意味を持ちます。記念日は2023年(令和5年)に一般社団法人・日本記念日協会に認定・登録されました。

汽水域は環境変動の激しい水域でもあります。治水・利水を名目に傷ついた生態系が完全に回復するには、中止から何十年もの時間を要します。宍道湖・中海の自然環境を守り続ける取り組みは、今も静かに続いています。