定額減税の仕組みと月額の影響をわかりやすく解説
ベストカレンダー編集部
2024年06月10日 22時54分
定額減税とは?
定額減税とは、税額を一定額減額する減税の方法です。2024年6月に実施される予定の定額減税では、1人あたり所得税3万円、住民税1万円の計4万円が減税されます。
この減税の対象になるのは納税者本人とその扶養家族(いずれも居住者のみ)です。たとえば、夫婦と子ども2人の世帯では合計16万円の減税が受けられます。これにより、納める税金が少なくなるので、手取りが増えます。
ただし、年収2000万円超(厳密には「合計所得金額1805万円超(給与収入のみの場合、給与収入2000万円)」の富裕層は対象外です。
定額減税の目的は、物価高に対して賃金の上昇が追いつかない現状を踏まえ、国民の負担を緩和することです。
定額減税の具体的な仕組み
所得税と住民税では、減税の方法が異なります。
所得税の減税方法
所得税の定額減税は、給与から源泉徴収されている所得税を直接減らします。2024年6月から12月の7カ月間に1人あたり3万円分を差し引きます。
ただし、ひと月の所得税がそもそも3万円に満たない場合には、翌月以降に繰り越して減税を行います。たとえば、毎月の所得税額が8000円(年約10万円)の単身者の場合、所得税は次のように減税されます。
月 | 所得税額 | 減税額 |
---|---|---|
6月 | 8000円 | 8000円 |
7月 | 8000円 | 8000円 |
8月 | 8000円 | 8000円 |
9月 | 8000円 | 6000円 |
10月以降 | 8000円 | 0円 |
このように、減税しきれなかった所得税の控除は、2024年12月まで続きます。
住民税の減税方法
住民税は、2024年6月分を徴収せず、7月分から2025年6月分までの11カ月間にわたって減税分を均等に割り振って徴収します。
たとえば、住民税額が年20万円の4人家族(夫婦と子ども2人)で、夫が妻と子どもを扶養している場合、住民税の定額減税は次のように行われます。
月 | 住民税額 | 減税額 |
---|---|---|
6月 | 0円 | 0円 |
7月~翌年5月 | 1万4545円 | 1万4545円 |
ここまで紹介したとおり、定額減税はあくまで本来支払う所得税や住民税から一定額を差し引く制度です。そのため、所得税や住民税を納税しているものの、その金額が1人あたり4万円に満たない場合、定額減税の恩恵が受けにくくなってしまいます。
給付金の支給
所得が少ないなどの理由で所得税や住民税を納めていない方の場合、定額減税の恩恵が受けられなくなってしまいます。そうした方には、定額減税ではなく給付金が支給されます。具体的には、
- 住民税の均等割は納めているものの、所得税は非課税の世帯 →1世帯あたり10万円
- 住民税非課税世帯 →1世帯あたり7万円
住民税非課税世帯には、すでに2023年夏以降に3万円が給付されているため、7万円となっています。今回の定額減税で、低所得者世帯・住民税非課税世帯とも合わせて10万円の支援が行われることになります。
また、これらの世帯で18歳以下の子を扶養している場合には、1人あたり5万円の給付金が追加で支給されます。
これらの給付金の給付時期は自治体により異なります。2024年2月から3月にかけて支給が開始されている自治体もあります。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。
定額減税の影響とその課題
定額減税は国民の負担を緩和するための措置ですが、一律の給付に比べて制度が複雑なことや、減税が複数の月にわたって行われるケースも多いことから、手取りの増加を実感しにくく効果が薄いのではないかという指摘も出ています。
また、住宅ローン控除やふるさと納税には影響しませんが、税金を納めていない方には給付金が支給されるため、手続きや事務負担が増える可能性があります。
政府は、ことしの春闘による賃上げが実際に給与に反映される時期にあわせて減税を行うことで、手取りの増加を実感してもらい、デフレ脱却を確かなものにしたいとしています。しかし、減税しきれない分を給付で補うことにしています。
具体的には、それぞれの市区町村が過去の納税額の実績などをもとに減税しきれない金額とそれに見合った給付額を推計し、夏ごろから順次、対象者に給付の申請書を送付するということです。また、納税額が確定する段階で収入が大幅に減少したり、扶養家族が増えたりして給付額が足りなかった人には、来年以降、追加の給付も実施します。
このほか、政府は住民税の非課税世帯や住民税の均等割のみ課税されている世帯に対しては、去年から順次、10万円の給付を進めているほか、子育て世帯にはさらに手厚い支援が必要だとして、18歳以下の子ども1人あたり追加で5万円の給付を行っています。
デジタル庁は、事務の迅速化に向けて給付額を自動計算するシステムを提供しています。このシステムでは、過去の住民税の納税額や扶養家族の人数などを入力すると、所得税分も含めて減税しきれない金額がどれだけあり、それに見合った給付額はいくらかを自動計算します。
定額減税は現状、2024年の1回のみですが、2024年度の税制改正大綱には「今後、賃金、物価等の状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する」とも記載されています。今後の動向によっては、さらなる減税もあるかもしれません。
減税になったからといって、多くなった手取りを無駄遣いするようでは本末転倒です。必要な支払いを行った残りは貯蓄するなど、有効活用するようにしましょう。