カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?その意味と対策を詳しく解説
ベストカレンダー編集部
2024年05月22日 11時25分
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が企業に対して理不尽なクレームや言動を行うことを指します。具体的には、事実無根の要求や法的な根拠のない要求、暴力的・侮辱的な方法による要求などがカスハラに該当します。企業は従業員をカスハラから守る責任があり、そのための対策を講じることが求められます。
カスハラの定義は明確ではありませんが、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では以下のように定義されています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの
また、パワハラ防止指針では「顧客等からの著しい迷惑行為」とも定義されています。
カスハラが増加した背景
カスハラが増加した背景には、SNSの普及が大きな要因となっています。SNSを通じて顧客が企業を容易に批評できるようになり、その結果、顧客側の発言力が増し、企業側がそれに屈してしまう場面が増えました。
また、ハラスメントを強く問題視する近年の潮流もカスハラの増加に寄与しています。以前から存在していた不当なクレームや言動が、新たなハラスメントの類型として取り上げられるようになったのです。
カスハラに当たる行為の具体例
カスハラに該当する行為の具体例としては、以下のようなものがあります。
- 店員を怒鳴りつける
- 店員に土下座を要求する
- 不手際のお詫びに、店舗の商品を無料で提供するようにしつこく要求する
- 顧客自ら商品を壊した上で「商品が壊れていた」とクレームを入れる
企業がカスハラを放置するリスク
カスハラに当たる不当な行為を放置すると、企業は以下のようなリスクを負うことになります。
- 生産性の低下:従業員のモチベーションが低下し、企業としての生産性が低下する。
- 離職者や休職者の増加:カスハラによって精神的ダメージを負い、離職や休職に至る従業員が増える。
- レピュテーションの悪化:カスハラを拒絶できない弱腰な企業という評判が定着し、社会的な評価が下がる。
正当なクレームとカスハラの違い・判断基準
企業は正当なクレームには誠実に対応し、不当なクレーム(カスハラ)は断固拒絶する必要があります。正当なクレームとカスハラの区別は以下の2つの基準に基づいて行います。
- 顧客の要求内容に妥当性があるか
- 要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当か
顧客の要求内容に妥当性があるか
顧客からクレームを受けた場合、まず事実関係を確認し、自社に過失がないか、顧客の要求に妥当性があるかを検討する必要があります。自社に過失があり、顧客の主張に一定の妥当性がある場合は、正当なクレームとして対応すべきです。しかし、自社に過失がなく、顧客の主張が言いがかりに過ぎない場合は、カスハラとして毅然とした対応を取るべきです。
要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当か
顧客のクレームに一定の妥当性があるとしても、主張を訴えるための手段・態様が社会通念上不当な場合はカスハラに該当します。例えば、長時間に及ぶ説教や暴力・暴言・土下座要求などが行われた場合は、クレームの内容にかかわらずカスハラとして扱い、顧客の出入り禁止などを含めた対応を検討すべきです。
カスハラと関係の深い法令など
カスハラに関しては、企業が負う義務とカスハラ行為者の法的責任が関連します。以下の法令が深い関係を持っています。
企業側 | カスハラ行為者側 |
---|---|
労働契約法 | 民法 |
労働施策総合推進法、厚生労働省指針 | 刑法、軽犯罪法 |
企業:労働契約法|従業員への安全配慮義務
会社は従業員に対し、生命・身体などの安全を確保しつつ労働できるように必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。これを「安全配慮義務」といいます。カスハラをする顧客が現れた際には、会社は安全配慮義務に基づき、従業員をカスハラから守らなければなりません。
企業:労働施策総合推進法・厚生労働省指針|カスハラ対応に必要な体制を整備する義務
会社は、職場におけるパワハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務を負っています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。厚生労働省は事業主が講ずべきパワハラ防止措置の適切かつ有効な実施を図るための指針を公表しています(同条3項)。
カスハラ行為者:民法|損害賠償責任
カスハラをした顧客は、その対応によって精神的ダメージを受けた従業員に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります(民法709条)。また、会社がカスハラ対応にコストを要した場合や、会社の名誉が毀損された場合には、カスハラ顧客は会社に対しても損害賠償責任を負います。
カスハラ行為者:刑法・軽犯罪法|刑事上の責任
カスハラは、その内容によっては以下の犯罪が成立する可能性があります。
- 暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)
- 名誉毀損罪(刑法230条1項)、侮辱罪(刑法231条)
- 脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)
- 威力業務妨害罪(刑法234条)
- 軽犯罪法違反(同法1条5号)
カスハラに備えて企業が講ずべき対策
カスハラをする顧客が現れた場合に備えて、企業はあらかじめ以下の対策を講じておくことが重要です。
- カスハラ対応マニュアルの策定
- カスハラ対応に関する従業員研修の実施
- カスハラに関する相談窓口の設置
- カスハラが起こった場合の対応フローの整備
- カスハラを受けた従業員のケア
- カスハラ対応マニュアルの見直し
カスハラ対応マニュアルの策定は、企業が一貫性のある対応を取るために非常に重要です。具体的には、連絡フローに従って責任者への情報共有・引き継ぎを行い、顧客の主張を聴き取って記録化し、現場限りでの対応か持ち帰りかを判断する必要があります。
また、カスハラを受けた従業員のケアも重要です。精神的なダメージを受けた従業員に対しては、適切なメンタルヘルスケアを提供し、再発防止のためにマニュアルの見直しを行うことが求められます。
さらに、社内に相談窓口を設置し、従業員がカスハラに関する問題を気軽に相談できる環境を整えることも重要です。相談窓口はカスハラだけでなく、その他のハラスメント対策にも有効です。
従業員へのカスハラに関する知識研修も必要です。従業員がカスハラの具体例や対応方法を事前に知っておくことで、実際にカスハラが発生した際に迅速かつ適切に対応できるようになります。
最後に、カスハラが度を越し、社内で対応できない場合は、警察や弁護士・警備会社などの外部機関に相談することが推奨されます。カスハラを受けた際には、証拠(防犯カメラの映像や会話の録音など)を残すことが重要です。
カスハラは非常に悪質な行為であり、企業には従業員を守る義務があります。企業や従業員を守るためにも、早めに対応策を考え実施することが求められます。
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健康経営とは? 意味とメリット、やり方・取り組み例を初心者向けに解説
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