2024年11月15日開始、サイレント閉館調査とデジタル化プロジェクト
ベストカレンダー編集部
2024年10月29日 23:15
サイレント閉館調査
開催日:11月15日

「文化の日」の消滅危機:ミュージアムの「サイレント閉館」が急増
2024年10月29日、一般社団法人「路上博物館」が発表した独自調査によると、物価の高騰や新型コロナウイルスの影響で、博物館や美術館などのミュージアムが深刻な状況に直面しています。特に、近年のミュージアムの閉館件数は増加の一途をたどり、2022年までは年間約10件だった閉館が、2023年には21件に達し、約2倍に増加しました。2024年の9月時点では既に14件の閉館が確認されており、このままでは年末にかけてさらに増加する可能性があります。
このようなミュージアムの閉館は、報道でもほとんど取り上げられておらず、路上博物館はこれを「サイレント閉館」と名付けました。「サイレント閉館」とは、誰にも注目されずに静かに閉館が進む状況を指します。全国各地で進行するこの現象に注目し、貴重な資料をどのように守り、伝えていくかを考えるきっかけを作るために、報道関係者の協力が求められています。

サイレント閉館の実態と影響
路上博物館は、インターネット検索を用いてミュージアムの閉館に関する報道件数を調査しました。調査は2024年9月4日に行われ、報道機関の情報のみを対象としました。その結果、2018年から2022年までの平均閉館件数は9.4件でしたが、2023年には22件に増加し、2024年9月時点では既に14件に達しています。これは、過去の平均を大きく上回る数字です。
ミュージアムには1館あたり平均3万2,000点の資料が存在するとされており、2023年に22件が閉館したことにより、約70万点の資料を観覧する機会が失われた計算になります。この調査は報道された閉館件数のみを対象としているため、報道されずに閉館したミュージアムはまだまだ存在する可能性が高いと考えられています。

閉館の背景と社会的影響
路上博物館の館長、森健人氏は「サイレント閉館には社会全体の面的な取り組みが必要」と述べています。ミュージアムは古今東西の資料を保存・管理し、それらが活用される機会を提供する重要なインフラです。閉館する理由として「必要とされていないから」という意見もありますが、貴重で重要な資料が散逸することは避けなければなりません。資料の重要性は時間と共に増すことも多く、現代だけでなく、未来の世代にとっての問題でもあります。
森氏は、個別の施設を保存しようとする取り組みの重要性を認めつつも、社会全体としての「面」の取り組みが必要であると強調しています。路上博物館は、「サイレント閉館」の現状を広く知ってもらうための基盤を築き、社会全体の課題として捉え、今後に繋がる議論を促進することを目指しています。

路上博物館の新規プロジェクト
路上博物館は、サイレント閉館が広がる中で、次のようなプロジェクトを開始することを発表しました。
- サイレント閉館の実態調査と公表:閉館原因やミュージアムの地理的分布、閉館したミュージアムのジャンルなどを調査し、なぜ閉館が進むのか、また閉館を避けるための取り組みについて分析し、公表します。
- ミュージアムの展示のデジタル化と公開:全国の博物館と連携し、資料のデジタル化やその活用支援を推進します。過去には閉館する水族館のバーチャル移転プロジェクトも実施しており、知見を活かして展示のデジタル化と公開を行います。
- 寄付を呼びかけるクラウドファンディング:サイレント閉館の実態調査及び閉館するミュージアムのデジタル化のための活動資金を集めるクラウドファンディングを2024年11月中旬から実施し、集まった寄付金を基に活動を行い、その成果報告を2025年夏頃に行う計画です。

一般社団法人路上博物館について
一般社団法人路上博物館は、博物館に足を運ばない人々に博物館資料の面白さを伝えることを目的に、収蔵標本のレプリカを路上で展示する活動から始まりました。2020年5月18日の「国際博物館の日」に設立され、博物館と標本・資料の魅力をより多くの人に伝えるために様々な活動を行っています。
法人名は「一般社団法人路上博物館(The Museum on the Street Association)」で、東京都文京区に所在します。公式ウェブサイトはこちらです。
項目 | 内容 |
---|---|
調査対象 | 博物館、美術館、資料館、動物園、水族館、植物園、科学館など |
2022年までの閉館件数 | 年間約10件 |
2023年の閉館件数 | 21件 |
2024年9月時点の閉館件数 | 14件 |
1館あたりの平均資料点数 | 32,000点 |
2023年の閉館による資料喪失数 | 約700,000点 |
このように、ミュージアムの閉館は深刻な問題であり、今後の取り組みが求められています。路上博物館は、サイレント閉館の実態を調査し、デジタル化を進めることで、貴重な資料を守るための活動を行っていく予定です。社会全体の理解と協力が必要な時期に来ていると言えるでしょう。
参考リンク: