FOMC 7月会合のポイント:インフレと利下げの行方

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FOMCの会合って何?
FOMC(米連邦公開市場委員会)は、アメリカの金融政策を決定する重要な会議です。年に8回開催され、金利の変更や経済の見通しについて議論します。
7月のFOMCで何が話し合われたの?
2024年7月のFOMC会合では、インフレの鈍化が議論され、FRBが利下げの可能性を示唆しました。PCE物価指数の上昇率が低下していることが背景にあります。

7月のFOMC会合の概要

2024年7月30日と31日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合では、インフレに関する重要な議論が行われました。この会合の結果、FRBがインフレの文言を修正し、利下げの可能性を示唆する動きが見られました。

FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数の前年比上昇率は、2021年の5月から7月にかけて3カ月連続で2%の2倍を超える水準を記録しました。しかし、最近ではPCE物価指数の上昇率は2.6%に鈍化し、さらに下がり続ける兆候が見られます。

インフレの文言修正とその意義

FOMC声明には依然として「高いインフレ(elevated inflation)」という表現が残っていましたが、7月の会合でこの表現がなくなる可能性が指摘されています。もしこの表現がなくなれば、FRBが早ければ9月にも利下げに踏み切るという強いシグナルとなります。

FRBのスタッフリポートは、PCE物価指数の上昇率が3%を割り込んだことを受けて、1月には既にインフレについて「elevated」との表現をやめています。FRBの政策立案者もインフレが経済全体で減速し続けると確信を深めています。

リッチモンド連銀のバーキン総裁も、FOMCに先立って新たなPCEデータが発表されることを指摘し、適切な調整を行うと述べました。

エコノミストの見解と市場の反応

ルネッサンス・マクロの経済調査責任者、ニール・ダッタ氏は、「FRBはインフレの鈍化をもっと積極的に認めるべきだ」と指摘しています。彼の分析によれば、住宅インフレ指標は第2四半期を通じて家賃が下落し、「本格的な減速」を示しています。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、米国は「われわれが望んでいるディスインフレ傾向に近づいている」と述べています。インフレ・インサイツの代表であるオメール・シャリフ氏も、過去13カ月のうち10カ月で基調インフレ率が平均してFRBの目標とする2%に達していると指摘しています。

これらの見解から、9月のFOMCが最初の利下げの候補であることが示唆されています。

今後の金融政策の展望

FRBのパウエル議長は、「引き続きデータ重視のアプローチで臨む」と述べ、次回9月のFOMCで利上げを実施する可能性も実施しない可能性もあると語りました。また、米国経済が景気後退を回避してソフトランディングする確率が高まっていると自信を示しました。

政策決定、声明文、パウエル議長の発言を含め、今回のFOMCでは異例なほどサプライズはありませんでした。金融市場の関心は、次回9月のFOMCで追加利上げがあるかどうか、さらに、FF金利の年内残り1回の引き上げというFOMC参加者の見通しが維持されるかどうかに移っています。

FF金先市場は次回9月を中心に、年内1回の追加利上げを予想しています。さらに、年内の利下げはなく、来年に合計1.5%の利下げを予想しています。

筆者は、9月の追加利上げの実施についてはなお不確実ながらも、年内にあと一回の利上げが実施された後、政策金利は据え置かれ、来年には利下げが実施されると予想します。

ただし、金融市場は来年以降の利下げも比較的小幅にとどまり、FF金利は4%台程度までしか下がらないと予想していますが、筆者はより大幅な利下げに発展すると見ています。その場合、10年国債利回りが現状の4%程度で留まることはなく、来年にも3%程度まで低下する可能性を見ています。

米国では物価上昇率の低下傾向が明確になってきました。これが、金融市場で、FRBの利上げ打ち止めに近いとの期待を高めるとともに、米国経済がソフトランディングに向かう、との楽観論を強めています。

しかし、米国経済については、物価上昇率の落ち着きが見られ始めてから、むしろリスクが高まるという面があるのではないかと指摘されています。物価上昇率が低下してきていること自体が、金融引き締めによる景気減速の表れとも言えます。

FRBが物価高に対する警戒を容易に解かない中で、景気の減速が明確になれば、金融市場、企業、家計の中長期のインフレ期待はさらに低下していくでしょう。その結果、実質金利(名目金利―インフレ期待)は上昇し、それが経済活動を抑制します。

つまり、FRBの利上げが最終局面に近づく中、物価上昇率の落ち着きが見られるようになり、中長期のインフレ期待が低下する局面で、実質金利は上昇し、事実上の金融引き締め効果が強化されるのです。

FRBの利上げも米国経済の状況も微妙な局面に入ってきました。年内かどうかはなお不明ですが、少なくとも来年には米国経済が景気後退に陥り、金融市場が現在想定しているよりも本格的な金融緩和が実施されると見ています。それは米国の長期金利を大きく押し下げるとともに、急速な円高ドル安の巻き戻しを生じさせるでしょう。

以上が7月のFOMC会合に関する詳細な分析と見解です。今後のFRBの動向に注目し、経済の変動に対応することが重要です。

情報元の詳細についてはロイターの記事野村総合研究所のブログを参照してください。