三菱電機、2024年11月22日に電気科学技術奨励賞を受賞した技術とは?

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三菱電機が受賞した技術ってどんなもの?
三菱電機は、RIR光学技術、トランスレス高周波高電圧インバータ技術、耐湿環境性能向上技術で受賞しました。
受賞式はいつ行われるの?
受賞式は2024年11月22日に東京都千代田区の学士会館で行われます。
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令和6年度「第72回電気科学技術奨励賞」の受賞について

三菱電機株式会社は、2024年10月29日、公益財団法人電気科学技術奨励会が主催する令和6年度「第72回電気科学技術奨励賞」において、3つの技術が評価され受賞したことを発表しました。受賞した技術は、超薄型・高効率ヘッドライトを実現するRIR光学技術、プリント基板穴あけ用レーザ加工機向けトランスレス高周波高電圧インバータ技術、電鉄・電力システムの安定稼働を支えるパワーデバイスの耐湿環境性能の向上です。受賞式は、2024年11月22日(金)に東京都千代田区の学士会館で行われます。

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受賞技術の詳細

受賞した技術について、以下に詳しく説明します。

1. 超薄型・高効率ヘッドライトを実現するRIR光学技術

自動車やバイクのヘッドライトには、ロービームの光が上方に飛ばないための境界線(カットオフライン)を形成するなど、緻密な配光が求められます。従来のヘッドライト光学系では、LEDからの光をミラーコーティングを施したリフレクターを用いて集光し、配光を形成していましたが、この方法では光学系が大型化し、光の利用効率が低下するという課題がありました。

三菱電機が開発したRIR光学系は、従来のリフレクターを使用せず、レンズの屈折作用と全反射作用のみで必要な配光を実現しています。その結果、高さ20mmのレンズにおいて、光利用効率を従来方式の1.8倍に向上させ、従来一般的な高さ40~60mmのレンズと同等以上の明るさを確保しました。この技術により、デザイン性や省エネ性が向上したことが高く評価されました。

2. プリント基板穴あけ用レーザ加工機向けトランスレス高周波高電圧インバータ技術

デジタル機器の小型化・高性能化に伴い、高密度プリント基板の需要が急拡大しています。この中で、基板の穴あけ加工にかかる時間の短縮が求められています。特にミクロン単位の微細な穴を基板に加工する「プリント基板穴あけ用レーザ加工機」の穴あけ速度を上げるためには、インバータ装置を用いてレーザ発振器を高周波高電圧で駆動させる必要があります。

三菱電機は、高速スイッチ可能なMOSFETを多直・多並列に接続したユニットを用いて、変圧器を使わずに直流高電圧から直接交流出力を生成する「トランスレス高周波高電圧インバータ技術」を開発しました。この技術により、当社製レーザ加工機の穴あけにおいて毎秒7,000穴を実現し、多層基板の層間接続穴の加工速度を高速化しました。

3. 電鉄・電力システムの安定稼働を支えるパワーデバイスの耐湿環境性能の向上

鉄道車両や高圧直流送電システムに使用されるパワー半導体は、電力の高出力・低損失の性能に加え、湿度の変動が大きい屋外環境でも安定動作する耐環境性能が求められています。パワー半導体チップの構造において、湿度が高い環境での保持電圧低下を防ぐために、終端領域を広くする必要がありますが、これが有効領域を狭くするトレードオフ関係が課題でした。

受賞した技術では、新しい電界緩和構造と表面電荷制御構造を適用し、終端領域を30%低減しつつ、従来比100倍の耐湿環境性能を実現しました。この技術は、鉄道車両や洋上風力発電設備などに搭載され、安定稼働を支えることが評価されています。

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電気科学技術奨励賞について

電気科学技術奨励賞は、公益財団法人電気科学技術奨励会が主催し、電気科学技術に関する発明、研究・実用化、教育などで優れた業績を挙げた人々を表彰するものです。この賞は、日本の産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も顕著な成果が期待できる人々を対象としています。

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受賞技術のまとめ

技術名 概要 評価ポイント
RIR光学技術 超薄型・高効率ヘッドライトの実現 光利用効率1.8倍、部品数削減、高精度配置
トランスレス高周波高電圧インバータ技術 プリント基板穴あけ加工の高速化 毎秒7,000穴の加工速度
パワーデバイスの耐湿環境性能向上 高出力・低損失と耐湿環境性能の両立 終端領域30%低減、耐湿性能100倍

以上の技術が評価され、三菱電機は令和6年度「第72回電気科学技術奨励賞」を受賞しました。これにより、同社の技術力と革新性が再確認され、今後のさらなる発展が期待されます。

参考リンク: