尿中マイクロRNAを用いたすい臓がん診断試験が2024年10月31日開始
Craif、尿中マイクロRNAによるすい臓がん診断補助医療機器プログラムの臨床試験を開始
Craif株式会社(所在地:東京都文京区、CEO:小野瀨 隆一)は、尿中マイクロRNA等を用いたAI(人工知能)アルゴリズムに基づくすい臓がん診断補助医療機器プログラムの多施設共同臨床試験を開始しました。この試験は、主要な臨床データを取得するためのピボタル試験として位置づけられ、厚生労働省への製造販売承認申請を目指しています。
本医療機器は、すい臓がんが疑われるハイリスクの患者さんに対して使用される予定であり、尿中のマイクロRNA等の発現量から算出したスコアに基づいて陽性または陰性の判定を行います。このプログラム医療機器は、2026年の医療機器承認申請を目指しています。
すい臓がんの現状と背景
すい臓がんは早期発見が非常に困難な予後不良の疾患であり、近年では日本における死亡数が年々増加しています。特に2023年には、胃がんを抜いて死亡原因の第3位になっており、その5年相対生存率は約10%と非常に低い数字となっています。
すい臓がんは進行期になると特に生存率が低下します。具体的には、ステージⅢでは6.8%、ステージⅣでは1.4%という厳しい状況です。早期ステージでは症状が出にくく、特異的な症状が乏しいため、CA19-9などの腫瘍マーカーの変動がない場合も多く、早期発見のための有用な検査手段は未だ確立されていません。
早期発見の必要性
このような背景の中、CraifはAIを用いて早期ステージのすい臓がんに特徴的なマイクロRNAプロファイルを特定し、発現プロファイルの解析を通じて診断補助を行うための医療機器プログラムの開発を進めています。特に、がんに関連するバイオマーカーの中でも、腫瘍サイズが小さい段階からエクソソームを介して異常なマイクロRNAの分泌が始まることが知られており、早期発見に適したバイオマーカーとして期待されています。
本医療機器の活用イメージ
本医療機器は、既存の腫瘍マーカーや腹部超音波検査(US)と同様に、すい臓がんの臨床症状やリスク因子を有する患者に対して用いられます。これにより、より精密な検査の実施を判断するための一助となることが期待されています。
具体的には、すい臓がんのリスク因子を持つ患者に対し、尿中のマイクロRNAを用いて早期のがんシグナルを捉えることで、非侵襲的に診断補助を行います。このアプローチは、従来の腫瘍マーカーや超音波検査の感度が不十分である中で、早期発見の可能性を高める画期的な手段とされています。
臨床試験参加医師のコメント
川崎医科大学 消化器内科の吉田浩司教授は、すい臓がんの進行が速いため、早期発見が治療成果を向上させるために重要であると述べています。腫瘍マーカーや腹部超音波検査の感度が不十分であるため、初期のすい臓がんの検出は極めて困難ですが、尿を用いたマイクロRNAから早期がんのシグナルを捉えられる可能性があることは非常に意義深いとしています。
試験で十分な有効性が示された場合には、薬事承認申請を経て保険適用されることが期待され、すい臓がんの早期発見を目的とした検査として広く浸透する可能性があります。
試験概要と今後の展望
本試験の概要は以下の通りです。
試験名称 | 尿中バイオマーカーを用いた機械学習モデルによる膵がん診断性能の研究 |
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目標参加者数 | 800名 |
試験終了見込 | 2025年12月 |
UMIN試験ID | UMIN000053882 |
URL | UMIN試験情報 |
この試験の成果により、すい臓がんの早期発見率が向上し、最適な治療ができる人が増えることが期待されています。
Craif株式会社について
Craifは、2018年に設立された名古屋大学発のベンチャー企業です。尿などの簡単に採取できる体液中から、マイクロRNAをはじめとする病気に関連した生体物質を高い精度で検出する基盤技術「NANO IP®︎(NANO Intelligence Platform)」を有しており、がんの早期発見や個別化医療の実現に向けた検査の開発に取り組んでいます。
以下に、Craifの会社概要を示します。
社名 | Craif株式会社(クライフ、英語表記:Craif Inc.) |
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代表者 | 代表取締役 小野瀬 隆一 |
設立 | 2018年5月 |
資本金 | 1億円(2024年3月1日現在) |
事業内容 | がん領域を中心とした疾患の早期発見や個別化医療の実現に向けた次世代検査の研究・開発、尿がん検査「マイシグナルシリーズ」の提供 |
本社 | 文京区湯島2-25-7 ITP本郷オフィス5F |
URL | Craif公式サイト |
以上の情報をもとに、今後のすい臓がん診断の進展が期待されます。すい臓がんの早期発見に向けた取り組みが進む中、医療機器の開発がどのように進展するのか注目されます。
参考リンク: