シアノバクテリアの新光利用システム「シアノロドプシン-II」を発見
ベストカレンダー編集部
2024年11月4日 05:14
シアノロドプシン-II発見
開催日:11月1日
シアノバクテリアの新たな光利用システムの発見
2024年11月3日、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人理化学研究所、国立大学法人岡山大学、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による共同研究が、最古の光合成生物であるシアノバクテリアに関する新たな発見を発表しました。この研究では、シアノバクテリアが持つ新しい光利用システム「微生物型ロドプシン」のグループを特定し、それを「シアノロドプシン-II(CyR-II)」と名付けました。
この発見は、シアノバクテリアが異なる環境に適応するために、光の波長を利用する能力を進化させてきたことを示唆しています。CyR-IIは、緑色光型と黄色光型の2つのタイプに分類され、これらはそれぞれ異なる生息環境に由来しています。
シアノロドプシン-IIの特徴
シアノロドプシン-II(CyR-II)は、シアノバクテリアが持つ新しいロドプシングループで、緑色光型と黄色光型の2つのタイプがあります。具体的には、緑色光型はマングローブや海洋微生物マットに分布し、黄色光型は堆積物や土壌に見られます。このことから、シアノバクテリアはそれぞれの光環境に適応してきたと考えられています。
CyR-IIは、光エネルギーを利用して細胞内から水素イオン(H+)を排出する機能を持ち、これにより化学エネルギーを生成します。また、CyR-IIの構造解析により、ロドプシン内のレチナール色素周辺に微細な構造の違いがあることが明らかになり、これが光の吸収波長の違いを生じさせていることがわかりました。
シアノバクテリアの進化と光利用戦略
シアノバクテリアは、光合成を行う微生物として知られていますが、近年の研究により、光合成とは異なる方法で光を利用する能力があることが判明しました。特に、2000年代には海洋細菌から微生物型ロドプシンが発見され、光を利用する微生物の多様性が広がってきました。
本研究では、シアノバクテリアが持つロドプシンの多様性についても探求されました。これまでの知見では、「海洋のシアノバクテリアはロドプシンを持たない」とされていましたが、今回の研究によってこの見解が覆されました。特に、沿岸域に生息するシアノバクテリアにおいてロドプシンが多く見られ、光利用の新たな視点を提供しています。
- 緑色光型:マングローブ、海洋微生物マットに分布
- 黄色光型:堆積物、土壌に分布
研究の意義と今後の展望
この研究の成果は、シアノバクテリアが進化の過程で新しい光利用戦略を獲得し、それにより様々な環境に適応してきたことを示しています。特に、ロドプシンの獲得がシアノバクテリアの環境適応において重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
この発見は、微生物生態学の分野において新たな知見をもたらし、今後の研究においても重要な基盤となるでしょう。また、シアノバクテリアの光利用メカニズムの理解は、環境保全や持続可能なエネルギー利用に向けた応用研究にも寄与する可能性があります。
研究の詳細と発表内容
本研究の詳細は、国際誌「The ISME Journal」に2024年11月1日付けで掲載される予定です。研究の一部は、科学研究費助成事業や文部科学省の支援を受けています。
研究機関 | 役割 |
---|---|
国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 研究主導 |
国立大学法人東京大学 | 共同研究 |
国立研究開発法人理化学研究所 | 技術支援 |
国立大学法人岡山大学 | 研究協力 |
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) | 資金支援 |
シアノバクテリアの新たな光利用システムの発見は、微生物の進化と環境適応に関する理解を深める重要なステップであり、今後の研究が期待されます。
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