給与所得者向け!所得税の計算方法をわかりやすく解説

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所得税って何?
所得税は、個人の所得に対して課される税金です。給与所得者や自営業者など、所得を得る全ての人が対象となります。
給与所得者の所得税はどう計算する?
給与所得者の所得税は、給与所得金額を計算し、所得控除を差し引いて課税所得金額を算出し、最終的に税率を適用して計算します。

所得税の計算方法

所得税は、個人の所得に対して課される税金であり、給与所得者や自営業者など、所得を得る全ての人が対象となります。本記事では、所得税の計算方法について詳しく解説します。

給与所得者の所得税の計算方法

給与所得者の所得税額を求めるには、以下の3つのプロセスを経て計算します。

  • 給与所得の計算
  • 課税所得金額の計算
  • 所得税額の計算

それぞれのプロセスについて詳しく見ていきましょう。

給与所得の計算方法

給与所得金額は、以下の式で計算します。

給与所得金額 = 給与収入 – 非課税の手当 – 給与所得控除

例として、給与収入が400万円の場合の計算方法を見てみましょう。

給与収入 給与所得控除額 給与所得金額
400万円 124万円 276万円

給与所得控除額は、収入金額に応じて以下のように計算されます。

給与などの収入額 給与所得控除額
162万5,000円以下 55万円
162万5,000円超〜180万円以下 収入金額 × 40% – 10万円
180万円超〜360万円以下 収入金額 × 30% + 8万円
360万円超〜660万円以下 収入金額 × 20% + 44万円
660万円超〜850万円以下 収入金額 × 10% + 110万円
850万円超 195万円(上限)

出典:クラウド会計ソフト freee

課税所得金額の計算方法

次に、給与所得金額から所得控除額を差し引いて課税所得金額を算出します。

課税所得金額 = 給与所得 – 所得控除

所得控除には、配偶者控除や扶養控除、医療費控除など15種類があり、年末調整で対応できるものと個人で確定申告が必要なものがあります。

年末調整で対応可能な控除 適用条件
社会保険料控除 健康保険料や国民年金保険料などの支払い
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済やiDeCoの掛金の支払い
生命保険料控除 生命保険や介護医療保険、個人年金保険の支払い
地震保険料控除 地震保険料の支払い
障害者控除 納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合
寡婦(寡夫)控除 ひとり親に該当せず、夫と死別または離婚して扶養家族がいる場合
ひとり親控除 納税者がひとり親である場合
勤労学生控除 学校に行きながら働いている場合
配偶者控除 納税者の合計所得が1,000万円以下、配偶者の合計所得が48万円以下の場合
配偶者特別控除 納税者の合計所得が1,000万円以下、配偶者の合計所得が48万円超133万円未満である場合
扶養控除 16歳以上の子どもや両親などを扶養している場合
基礎控除 合計所得金額が2,500万円以下の場合

続いて、個人で確定申告が必要な控除は以下の3つです。

個人で確定申告が必要な控除 適用条件
雑損控除 災害や盗難、横領によって損害を受けた場合
医療費控除 一定額以上の医療費を支払った場合
寄付金控除 ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄附をした場合

たとえば、配偶者控除を受ける場合の課税所得金額の計算方法は以下の通りです。

課税所得金額 = 給与所得 – 配偶者控除

例として、従業員の合計所得金額が276万円かつ配偶者の合計所得が100万円の場合、配偶者特別控除36万円を受けると、課税所得金額は240万円となります。

所得税額の計算方法

所得税額は、以下の式で計算します。

所得税額 = 課税所得 × 税率 – 控除額

所得税の税率は、課税所得金額に応じて5%〜45%が適用される超過累進課税制度が採用されています。

例えば、課税所得が150万円の場合、税率5%が適用され、所得税額は7万5,000円となります。一方、課税所得が250万円の場合、税率は10%が適用され、所得税額は15万2,500円となります。

国税庁が発表している「所得税の速算表」を使用すると、簡単に所得税額を求めることができます。

課税所得金額 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円 5% 0円
1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円〜6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円〜8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円〜17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁

たとえば、課税所得金額が276万円の場合、税率は10%・控除額は9万7,500円です。実際の計算式にあてはめると以下のように所得税額を求めることができます。

所得税額 = 課税所得金額 × 税率 – 控除額

例:276万円 × 10% – 9万7,500円 = 17万8,500円

基準所得税額の計算方法

次に、算出した所得税額から税額控除額を引いて実際の納税額を計算します。ここで計算する実際の納税額のことを基準所得税額といいます。

税額控除とは、所得税額から直接差し引ける控除のことです。税額控除は主に22種類ありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

控除の種類 適用条件
配当控除 国内企業の株式からの配当が収入に含まれるとき
外国税額控除 外国企業からの収入があって、すでにその国の所得税が課されたとき
政党等寄付金特別控除 認定NPO法人等寄付金特別控除
公益社団法人等寄付金特別控除 所得控除である寄附金控除以外で、公的な団体に寄附をしているとき
住宅借入金等特別控除 住宅ローンを組んだとき
住宅耐震改修特別控除 1981年5月以前に建てられ、現在も使用されている住居に耐震工事をしたとき
住宅特定改修特別税額控除 住居にバリアフリー工事や省エネのためのリフォーム工事を施したとき

たとえば、所得税額が17万8,500円の人が、1970年に建てられた住居の耐震工事を行い、12万円住宅耐震改修特別控除を申告する場合の計算方法は以下のとおりです。

基準所得税額 = 所得税額 – 住宅耐震改修特別控除

例:17万8,500円 – 12万円 = 5万8,500円

復興特別所得税額の計算方法

2037年12月31日までは復興特別所得税が別途課せられます。復興特別所得税額は、基準所得税額の2.1%です。

復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%

例:5万8,500円 × 2.1% = 1,228円(1円未満は切り捨て)

出典:国税庁

所得税と源泉所得税の違い

源泉所得税とは、給与や報酬を支払う法人や個人が、給与や報酬を受け取る者の給与や報酬から一定の割合で先に徴収し、従業員に代わって支払う所得税のことを指します。源泉所得税と復興特別所得税を足して、実際に税務署へ納税する税金を源泉所得税といいます。

給与の場合、源泉徴収税額は総支給額から健康保険料などの社会保険料を差し引いた金額を、扶養人数に合わせて国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」にあてはめて算出します。源泉徴収税額は、概算の所得税額となります。年末調整や確定申告で実際に納める必要のある所得税額を計算し、源泉徴収で支払った所得税との差額を精算します。

所得税の計算方法についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。