朝露にかすむ野いちごのように―青森の郷土料理「いちご煮」の魅力

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いちご煮って何?
いちご煮は青森県南部地方の郷土料理で、生ウニとアワビを使った贅沢な吸い物です。名前は乳白色の汁に浮かぶウニが野いちごに似ていることから。
いちご煮の歴史は?
いちご煮の歴史は漁師がウニやアワビを煮たことから始まり、大正時代には料亭で供されるようになりました。地元の祝事などで重宝されています。

いちご煮とは

いちご煮は、青森県の南部地方を中心に伝わる郷土料理で、生ウニとアワビを主材料とする贅沢な吸い物です。この料理の名前は、椀に盛り付けた際に、乳白色に濁った汁に浮かぶ黄金色のウニが朝露にかすむ野いちごのように見えることから名付けられました。いちご煮の歴史は古く、漁師たちが潜って捕ったウニやアワビを浜で煮たのが始まりとされています。大正時代には料亭の料理として、お椀に美しく盛り付けて供されるようになりました。

いちご煮は、「青じその出る頃にウニが美味しくなる」といわれるように、ウニが旬を迎える7月ごろに地元で特に重宝されます。見た目も上品で、地元の人々にとってはお盆や正月、祝い事などのハレの日の食事として欠かせない存在です。シンプルながらも、素材の質と鮮度がこの料理の命とされ、特に良質なウニが獲れる地元ならではの味わいが楽しめます。

飲食方法としては、新鮮なウニとアワビを水かカツオ節のだしでさっと煮て、少量の醤油で味を整え、青じその千切りをトッピングするというシンプルながらも繊細な技が求められます。ウニのとろけるような食感とアワビのコリッとした食感、深みのある潮の香りに青じそのアクセントが加わり、絶妙な味わいを生み出します。

いちご煮の文化的・社会的意義

いちご煮は、単に美味しい郷土料理というだけではなく、青森県の文化や歴史、人々の生活と深く結びついています。特に、結婚式やお祝い事などの特別な場で供されることが多く、地域の人々にとっては大切な伝統として受け継がれています。また、この料理を通じて、地元の海の幸の豊かさや、漁師たちの生活、季節の移り変わりを感じ取ることができます。

現代においては、農林水産省のウェブサイトいちご煮ドットコムなどを通じて、この料理の魅力が広く紹介されています。また、SNSを利用した情報発信や商品化など、伝統を守りつつも現代的な取り組みでいちご煮を広めようとする動きも見られます。

いちご煮は、青森県の人々にとっては、祖先から受け継がれた大切な文化遺産であり、これからもその伝統を守りながら、新しい形で楽しむ方法を模索していくことでしょう。