牛川人骨は人類のものではなくクマの骨!12月1日の研究発表で判明
ベストカレンダー編集部
2024年12月1日 11:49
牛川人骨の再解析
開催日:12月1日
牛川人骨の新たな解析結果
2024年12月1日、新潟医療福祉大学の佐宗亜衣子助教と東京大学の諏訪元特任教授を中心とした研究グループが発表した結果により、日本の更新世人類化石の一つとされてきた「牛川人骨」が実際には人類の骨ではなく、クマの骨であることが明らかになりました。この研究は、比較形態学的解析を通じて行われ、牛川人の骨がヒトではないことを特定した重要な成果です。
この研究によって、牛川人骨が人類の化石ではないことが確認され、今後の日本における古人類学の研究に新たな視点を提供することとなります。これまでの研究においても、牛川人骨が動物の骨である可能性が指摘されていましたが、具体的にどの動物のどの部分の骨かは不明でした。
研究の背景と方法
牛川人骨は1957年と1959年に愛知県豊橋市牛川町で発見され、中期更新世に遡る化石人骨として報告されました。この研究では、牛川人骨とクマの骨(ヒグマ11個体、ツキノワグマ13個体)を比較し、肉眼観察やノギス計測、実体顕微鏡観察を通じて解析を行いました。
さらに、CT撮影を用いて断面画像の3次元モデルを作成し、詳細な比較解析を実施しました。以下に、牛川人骨とクマの骨に関する主要な発見を示します。
- 上腕骨の比較: 牛川人の上腕骨は、クマの橈骨(前腕の骨)の特徴と一致しており、特に三角筋粗面の配置関係が類似していることが確認されました。
- 大腿骨頭の比較: 牛川人の大腿骨頭もクマの大腿骨頭と同様の形状を持ち、関節面の形成範囲や骨端面の形状が異なることが示されました。
- 形態的特徴: 牛川人の骨は、クマの橈骨や大腿骨頭と同様の特徴を持ち、これまでのヒトの特徴とは明らかに異なることが確認されました。
研究結果の意義
今回の研究結果は、牛川人骨が実際にはヒトではなくクマの骨であることを明示するものであり、日本の旧石器時代に帰属するとされるヒト化石の中で、現時点では静岡県の根堅洞窟で発見された浜北人骨のみが唯一の存在となりました。
この研究によって、牛川人骨の発見が日本人研究者による古人類調査の発展に寄与したという学史的意義は変わらず、牛川人骨は後期更新世の動物の骨としても貴重な資料であるとされています。具体的な研究成果は以下の文献に記載されています。
- 文献1:
- Suzuki H. and Takai S. (1959) Entdeckung eines pleistozänen hominiden Humerus in Zentral-Japan. Anthropologischer Anzeiger, 23: 224–235
- 文献2:
- 鈴木尚(1963)日本人の骨.岩波書店,東京。
論文情報と研究助成
この研究に関する論文は「牛川人骨の部位・動物種別の特定と学史略考」というタイトルで、著者には諏訪元、佐宗亜衣子、佐々木智彦、中村凱、遠藤秀紀、松浦秀治が名を連ねています。掲載誌は「Anthropological Science(Japanese Series)」で、早期公開日は2024年12月1日です。DOIは こちら です。
研究は科研費「基盤A(課題番号:18H04007)」や「基盤B(課題番号:20H0137)」などの助成を受けて行われました。
新潟医療福祉大学とNSGグループについて
新潟医療福祉大学は、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部15学科を持つ医療系総合大学であり、チーム医療を実践的に学ぶ環境を提供しています。全国トップクラスの国家試験合格率や高い就職実績を誇り、スポーツと医療の融合した学びを展開しています。
また、NSGグループは教育事業や医療・福祉・介護事業を中核に、地域を活性化する事業を展開する108法人からなる企業グループです。地域を「世界一豊かで幸せなまち」にすることを目指して、さまざまな分野で事業を展開しています。
研究内容 | 詳細 |
---|---|
牛川人骨の解析 | クマの骨であることを特定 |
研究方法 | 比較形態学的解析、CT撮影 |
学史的意義 | 古人類調査の発展に寄与 |
論文情報 | 「牛川人骨の部位・動物種別の特定と学史略考」 |
このように、牛川人骨に関する新たな研究成果は、日本の古人類学における重要な発見であり、今後の研究においても注目されることでしょう。牛川人骨がヒトではないことが明らかになったことで、今後の人類化石研究に新たな視点を提供することが期待されます。
参考リンク: