ハヤシの日 (記念日 9月8日)

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皆さんは「ハヤシの日」をご存知ですか?この記念日は、東京都中央区日本橋の株式会社丸善ジュンク堂書店によって制定された日で、日本独自の洋食文化であるハヤシライスの魅力を広めることを目的としています。そもそもハヤシライスとは何か、そしてなぜ「ハヤシの日」が存在するのでしょうか?

ハヤシライスの歴史と起源

ハヤシライスの考案者・早矢仕有的

ハヤシライスは、丸善株式会社の創業者である早矢仕有的によって考案されたとされています。彼は1837年(天保8年)9月8日に生まれ、その誕生日が「ハヤシの日」とされています。ハヤシライスは、薄切りの牛肉とタマネギをデミグラスソースで煮込み、ご飯の上にかけるというシンプルながらも深い味わいの料理です。

早矢仕有的は、外国人との交流があり、西洋料理にも精通していました。彼が友人をもてなす際には、手持ちの肉や野菜を使ってゴッタ煮にし、それをご飯に添えて提供していたと言われています。

この料理が評判を呼び、「早矢仕さんのライス」と呼ばれるようになり、やがて「ハヤシライス」として街のレストランにも広まっていったという説があります。このエピソードは、1980年(昭和55年)発行の『丸善百年史』にも記載されています。

ハヤシライスの食文化としての普及

ハヤシライスはその後、日本全国に広がり、地域によっては牛肉の代わりに豚肉を用いたり、マッシュルームやその他の具材を加えるなど、さまざまなアレンジが行われてきました。

丸善ジュンク堂書店は、1954年(昭和29年)に日本橋店の屋上レストランで「丸善のハヤシライス」を提供し始め、これが半世紀にわたるハヤシライスの文化の一翼を担いました。

「ハヤシの日」の制定と現代への影響

記念日の制定背景

「ハヤシの日」は2016年(平成28年)に一般社団法人日本記念日協会によって認定・登録されました。同社は、創業120周年を記念して洋食シリーズ缶詰「新厨房楽」を発売し、更にレトルトパックシリーズを市場に投入するなど、ハヤシライスの普及に力を入れています。

記念日の制定は、このような歴史的背景とともに、ハヤシライスという料理が持つ文化的価値を再認識し、より多くの人々にその魅力を伝えるための一環です。

ハヤシライスの現代における位置づけ

現代においても、ハヤシライスは多くの家庭やレストランで愛され続けています。一方で、この料理の起源や歴史について知らない人も少なくありません。記念日を通じて、ハヤシライスの背景にある物語や、その食文化が持つ意味を知る機会が増えることは、食の多様性を理解し、新たな価値を見出すきっかけになるでしょう。

ハヤシライスと日本の洋食文化

洋食としてのハヤシライス

ハヤシライスは、日本の洋食文化において特別な位置を占めています。明治時代に西洋文化が流入してきた際、日本人の食生活にも変化が見られました。その流れの中で、ハヤシライスは日本人によって独自にアレンジされた西洋料理の一つとして広まりました。

しかし、ハヤシライスは単なる食べ物以上の意味を持っています。それは日本の近代化と西洋化の歴史の中で、独自の進化を遂げた文化の象徴でもあるのです。早矢仕有的の時代から現代に至るまで、ハヤシライスは時代とともに変化し、多くの人々に愛され続けてきたことは、まさに日本の食文化の豊かさを物語っています。

私たちは「ハヤシの日」を通じて、ハヤシライスだけでなく、日本の洋食文化全体に目を向け、その奥深さと魅力に改めて気づくことができるのではないでしょうか。歴史を振り返りながら、これからもハヤシライスをはじめとする多彩な洋食を楽しんでいけるよう、私たちの食文化を大切にしていきたいですね。