温泉の日 (記念日 9月9日)

温泉の日

大分県九重町の山中には、個性の異なる温泉が点在しています。硫黄の香り漂う寒の地獄温泉、川底からぷくぷくと湯が湧き出る川底温泉、炭酸ガスを多く含む高炭酸泉など、同じ「温泉」でも泉質も景観もまったく異なります。この多彩な温泉地をひとまとめにした呼び名が「九重九湯(ここのえきゅうとう)」です。

「九重九湯」は宝泉寺温泉・壁湯温泉・川底温泉・竜門温泉・湯坪温泉・筋湯温泉・筌の口温泉・長者原温泉・寒の地獄温泉の9つを指します。「九重」という地名と「九つの湯」が重なったこの名称は、語呂としても覚えやすく、温泉地の代名詞として長く親しまれてきました。9月9日が「温泉の日」とされているのも、「九(ここの)重(え)九(きゅう)湯(とう)」の語呂合わせが由来です。

この記念日を制定したのは九重町自身で、毎年9月9日には「九重九湯まつり」が開催されてきました。この日は町内の多くの温泉施設が無料開放され、地元住民はもちろん遠方からの観光客も湯めぐりを楽しみます。無料入湯という思い切った取り組みが、この記念日を単なる語呂合わせではなく、地域に根ざした行事へと育て上げました。歴史をたどると、平安時代の901年(延喜元年)、藤原氏との政争に敗れて大宰府へ左遷される途中の菅原道真が川底温泉を開いたという伝説が残っています。その後、各地で温泉が湧き出し、昭和50年代前半に発見された竜門温泉に至るまで、時代をまたいで温泉地が増え続けてきました。

現在は、2007年(平成19年)に九重町観光協会が新たに統一名称「九重「夢」温泉郷」を定めています。「九重九湯」という呼び名は歴史的経緯から生まれた9つの湯を指しますが、実際には12以上の温泉地が町内に点在しており、より広い範囲を包括する名称として「九重「夢」温泉郷」が使われるようになりました。名前が変わっても、9月9日に温泉が無料で開放される慣習は続いており、温泉大国・大分を象徴する記念日として今も息づいています。