金融市場の安定を脅かす「取り付け騒ぎ」とは何か?

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取り付け騒ぎって何?
金融機関への信用不安から預金者が一斉に預金を引き出す現象で、金融システムに大きな影響を及ぼす可能性があります。
取り付け騒ぎの防止策とは何?
金融規制、預金保険制度、預金封鎖、中央銀行の短期資金融資などがあり、場合によっては政府の介入も含まれます。

取り付け騒ぎとは

取り付け騒ぎ(とりつけさわぎ、英語:bank run)とは、金融機関に対する信用不安が原因で、預金者が一斉に預金を引き出しに走る現象を指します。経営破綻の噂や不確実な情報、デマがきっかけとなることが多く、この現象は金融システム全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

取り付け騒ぎが発生した場合、金融機関は窓口での対応や多額の預金払戻しにより業務が停滞し、資産の流動性が低いため、全預金を払い戻すことのできる現金を保有していないのが一般的です。これが経営危機に陥る原因となり、最悪の場合は経営破綻に至ることもあります。

取り付け騒ぎの防止には、金融規制による銀行の貸しすぎ防止、預金保険制度の導入、一時的な預金払戻の停止(預金封鎖)、中央銀行による短期資金の融資などの方法が取られます。これらは金融危機を未然に防ぐための措置ですが、場合によっては政府が介入して預金保護を行うこともあります。

日本では、大阪金融恐慌や昭和金融恐慌など、過去に複数の取り付け騒ぎが発生しており、これらは日本金融史において重要な出来事として記録されています。また、生命保険会社や損害保険会社の貯蓄性保険商品に対する取り付け騒ぎも見られ、経営破綻の引き金となるケースがありました。

デジタル時代における新たな形の取り付け騒ぎとして、ソーシャルメディアを通じた情報拡散が挙げられます。2023年のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻は、ソーシャルメディア上の情報が預金者の行動を急速に変える事例です。このようなデジタル時代の取り付け騒ぎは、従来の銀行前に列をなす光景から、スマートフォンを数回タップするだけで資金が引き出されるという形に変わりつつあります。この現象は、金融規制当局にとって新たなリスクとなっており、対応策の模索が急務となっています。

取り付け騒ぎの例として、Wikipediaには日本国内外の多くの事例が記載されています。また、ロイターによると、SNSの情報に煽られた顧客による取り付け騒ぎが起きた初の事例として、シリコンバレーバンクの破綻があります。

金融機関や政府は、取り付け騒ぎの発生を防ぐために様々な予防策を講じていますが、デジタル技術の発展に伴い、新たな対策が求められている現状があります。取り付け騒ぎは、金融市場の安定性にとって重要な課題であり、その対策は今後も進化し続けるでしょう。