DNPが未来の出版流通プラットフォームを構築、5月1日から復刊支援サービス開始
ベストカレンダー編集部
2025年3月21日 11:47
復刊支援サービス開始
開催日:5月1日

書店が売りたい本を生み出せる“未来の出版流通プラットフォーム”の構築を開始
大日本印刷株式会社(DNP)は、2025年2月に書籍流通の選択肢を増やすための“未来の出版流通プラットフォーム”の構築に取り組むことを発表しました。このプラットフォームは、書店員が売りたい本を選び、書店起点の戦略的な販促キャンペーンを可能にすることを目的としています。また、製造・流通の適正化を図ることで「本が読まれ続ける未来」を目指します。
この取り組みの第一弾として、DNP復刊支援サービスを2025年5月1日から提供開始することが決定しました。このサービスを活用することで、複数の書店で文庫の復刊販売が実施され、生活者が名作文庫と出会う機会を創出することが期待されています。

“未来の出版流通プラットフォーム”の背景と狙い
日本の出版業界は、2025年1月に経済産業省が発表した「関係者から指摘された書店活性化のための課題」において、書店の持続可能性のリスクが顕在化しています。以下のような課題があります:
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れによる単品ごとのデータ管理が行われていないこと
- 書店の粗利率が低く、経費を賄えずに書店経営を圧迫していること
- 委託販売制度により豊富な品揃えが担保される一方で、高い返品率が問題となっていること
DNPはこれらの課題を解決し、出版文化や産業の持続可能性を向上させるために、2024年7月に出版関連事業の未来の在り方を検討する社内組織を立ち上げました。この組織では、出版関連の各社が適切な利益を得られるように、本の「つくり方」と「届け方」を変える仕組みを提案し、構造的な課題解消のきっかけを作ります。
“未来の出版流通プラットフォーム”の特長
このプラットフォームにはいくつかの特長があります:
- 書誌データの集約・一覧化:新刊・既刊・重版未定を問わず、出版社からの書誌データをDNPが集約し、プラットフォーム上で書店が閲覧可能にします。これにより書店は売りたい本のタイムリーな仕入れが可能になります。
- 出版社と書店のマッチング・連携支援:書店は売りたい本を、出版社は本を売ってほしい書店を探せるようにし、書店と出版社の連携を支援します。
- デジタル製造と適切な流通:書店のニーズに基づく発注に対して、少部数から適時製造して納品します。これにより売り損じと返本を抑止します。
このように、プラットフォームは書店が独自に発注・販売して利益を得る仕組みを提供し、書店と出版社の関係をより強固にすることを目指しています。
DNP復刊支援サービスの詳細
DNP復刊支援サービスは、重版未定文庫本を、書店の注文に応じて復刊させ再流通させるものです。書店在庫がなく重版未定であっても、書店員が売れると見込む本は多く存在します。しかし、書店と出版社が直接やり取りして復刊可能な本や売り場を確保することは困難です。
DNPは、重版未定の文庫のデータを出版社から収集し書店に提供します。書店員はこのデータを参照して売りたい本を発掘し、DNPのデジタル製造による少部数印刷で復刊し販売します。復刊本は、1タイトルに対して1書店での独占販売が想定されています。
さらに、その本が重版となった際には、全国での再流通につながった報奨として、出版社から該当書店に重版部数に応じたインセンティブが支払われます。
今後の展開と持続可能な出版文化への貢献
DNPは、今後全国の書店と出版社に対して同プラットフォームへの参加を促し、文庫以外にもさまざまな出版物の情報をデータベース化していく計画です。2026年度までに“未来の出版流通プラットフォーム”を構築し、多くの書店や出版社が利用可能なオープンなインフラを目指します。
また、書店だけでなく、著者や生活者を起点とした本の「つくり方」と「届け方」の変革にも取り組む予定です。DNPは、出版社や取次、書店をはじめ、本に関係する多くの人々と「対話と協働」を進め、持続可能な出版文化・産業に向けて注力していきます。
項目 | 内容 |
---|---|
プラットフォームの開始時期 | 2025年2月 |
DNP復刊支援サービスの提供開始日 | 2025年5月1日 |
プラットフォームの特長 | 書誌データの集約、マッチング支援、デジタル製造 |
復刊本の販売方式 | 1書店での独占販売 |
今後の展開 | 全国の書店と出版社の参加促進、データベース化 |
このように、DNPの“未来の出版流通プラットフォーム”は、書店の持続可能性を高めるための新たな取り組みとして注目されています。書店員が売りたい本を選び、書店起点の販促キャンペーンを実施できる環境が整うことで、出版文化の発展が期待されます。